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ロクサーヌ(その24)

 このホテルに来てからもう2週間になるが、事態は一向に収まる気配がなかった。安禄山は新しい国を建てその皇帝を宣言していたが、一方では前の政府も西に避難しながら反攻の機会を伺っている。各地で漢人たちの義勇兵も立ち上がり争いは続いていた。「お坊さんはこれからどうされるお考えですか?」ご主人様が尋ねた。「私は日本へ帰ろうと思います。ここでは学問は出来そうもありません。」「日本はどんな国なのですか、噂では東の海の向こうで、まだ新しい国だと聞いていますが。」「私たちは、いつからかは分かりませんが、はるか昔から日本に住んでいました。ただ、国の名前を『日本』としたのはここ何十年かのことです。日本は静かで美しい国です、こことは全く違います。」「その日本へは、どうやって帰るおつもりなのですか?」「揚州まで運河を下り、揚州から日本行きの船に乗り換えて帰ろうと思っています。」「揚州まで行く船はあるのですか?」「このホテルで聞いたところ、コインさえ渡せば船を出してくれるそうです。もっとも肝心のコインが不足していますが。」私たちは、また迷った。ここにいても埒が明かないのは分かっている。だが、一度日本へ向かえば二度とサマルカンドには帰れないかもしれない。向かう途中で嵐に会い船ごと海に沈んでしまうかもしれない。砂漠の嵐には慣れているが、東の海は全く想像がつかないのだ。しかし、皆の意見を聞いてみると、ミトラは新しい冒険に乗り気だった。バルナはいつも静かなのだが、反対はしなかった。ナースティヤも、彼女は武術が得意で、やはり冒険したいと思っていた。翔(かける)と喜娘(きじょう)は、日本人の血を引いていると言われていたので、できれば行ってみたいと思っていた。私とご主人様だけが不安に思っていたようだ。最後は、ご主人様が決断した。「よし、まずは揚州までのんびり船旅をするとしよう。」私たちは、お坊さんと一緒に日本へ行くことにした。コインは私の緑色のカバンがあるから大丈夫。このカバンがこんな風に役に立つとは、敦煌で見たときには想像もつかない事だった。

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