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ロクサーヌ (その43)

  私たちの乗った列車は、海から山へ、また海へと向かい熱海、湯河原、小田原を過ぎてゆく。いつの間にか眠ってしまった私たちは、終点のトーキョーに着いた。大きなタワービルに隣接したターミナルは一見すると敦煌にそっくりだった。ターミナルは静かで人の気配もなかった。そして、タワーの上階の展望室から街並みを見ようとエレベーターに乗り込んだ。エレベーターは自動で動き出し、私たちは36階で降りるようにアナウンスが流れた。降りると、そこは入国管理局となっていて、自動で通路が開き検査室に通された。検査室では、一人ずつゲートをくぐりその先はそれぞれ別々のカプセルに入る。この間すべてが自動的に進み誰も人を見ることもなくアナウンスに従うだけだった。そして、カプセルの中で私たちはそれと気づく間もなく眠っていた。

 ロクサーヌは研究所の一室で椅子に座っていた。「7名の回収が完了しました。」アナウンスが流れた。「ウシュパルク教授、ロクサーヌが来ましたね。」そう言ったのは丁仙芝だった。「そうだ、彼ら7名は、とうとう向こうの世界から来てしまった。」ウシュパルクが答えて言った。

「連邦本部からの指令では、研究所の閉鎖までの猶予は3か月と決定されました。もしそれまでに、問題を解決できない場合は我々を含めて全てがシャットダウンされる可能性があります。」

「しかし、連邦本部はシャットダウンの際に起こる混乱を回避できると思っているのだろうか。」

「教授、計画では来月から順次バックアップされる予定です。既にヨーロッパではそのための準備が始まっているようです。」

「それでは、新型の量子コンピューターがドイツで開発に成功したという噂は本当なのかね。」

「そうです、このままでは私たちは敗北してしまうということです。」

「だが、大佐、私はどんなに優れた量子コンピューターができようと、問題は解決しないと思っている。ロクサーヌが時空間の壁を越えて、こちらの世界にやってきたのはその精神に原因があるのだろう。量子コンピューターで発生する電子の雲はそれを観測したときに一定の値をとることができる。つまり観測者の意識が決定しているということだ。であれば、その観測者の意識の状態によってどんな世界がそこに生れるのか、言い換えればどんな世界をその観測者が選択するのかが重要なのだ。私たちの衰退と破滅をもたらすものはその精神を理解しないと解決できないのではないだろうか。」

「教授が仰ることは分かります。しかし、それも実験の成果を出さなければ、意味を持ちません。今のままでは終わりが近いということです。そうなれば、私たち自身が消去されてしまいます。」

 ロクサーヌの目の前で、丁仙芝とウシュパルクが話している声が聞こえるのだが、その会話の内容は以前の敦煌での記憶とはかけ離れたものだった。ここはトーキョーなのだが、敦煌と似ている。丁仙芝もウシュパルクも外見は以前と変わらない。しかし、『何かが違っている』と私は思った。

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