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ロクサーヌ (その50)

2140年7月13日(水)
 私とラムと次郎は、日原へ向かった。奥多摩駅からバスに乗ってゆくのだが、途中から道は車1台がやっと通れる細さとなり、大きな断崖絶壁を張り付くようにして進む。このような景色は日本というよりは、中国の山奥の奇岩をを思わせる。そそり立つ岩山は赤茶け、また黄色く見える。頭上に迫る巨岩は張りめぐらされたネットでやっと落下を防いでいるようなありさまである。もしも、雨で崩れたらこのバスもひとたまりもないだろう。下は見ることもできないほど深い谷で、正面からたまに軽自動車が来るのだが、すれ違うためにはところどころにある避難場所でなければ不可能である。そのような道を小1時間ほど進み、やっと村に着く。
 その村では、家はみな道路から下へと下る坂の途中にある。つまり、道路から下にへばりつくようにして村全体が斜面になっているのである。もちろん戸数は少ない。バスを降りて更に30分ほど歩くと鍾乳洞があり、その手前に小さな神社があった。そばにある岩に竜神様と思われる形が見える。自然に出来たものか、彫られたものか私には分からなかった。その前で手を合わせて拝んでいると、あたりが暗くなってきた。やはり竜神様はいるのだと感じた。そして、私を呼ぶ声が聞こえてきた。それは以前、長安のタワーで見た人だと思った。ペーシュウォーダ(先に創られたもの)であった。その人に私は、私たちの世界が終わってしまうかもしれない事、私の大事な友人たちが捕らわれていることを話した。
その人が言うには『精神とはこれである』とは言えないが、しかし、衰退の原因はおおよそ分かっているという。
 かつて、ペーシュウォーダの人々がその文明の頂点にあった時、人々はあらゆるエネルギーと富とを持ち、豊かな社会であった。人々の科学技術は信じられないほど進歩していて銀河をも征服できる力があった。
 しかし、その文明が何世代か繁栄を続けた後、新しく生まれた人々は原始人のように退行してしまった。その人たちは社会の富や財や技術といった、過去の文明の成果を使うことはできたのだが、それを維持し更に新しいものを生みだすことはなかった。何故ならそれは既に完成されていて、何の不自由もなかったからだ。あまりに快適な生活が何世代も続き、生まれたときから快適な文明の環境しか知らないものは、そこで満足してしまったのだ。
 そして、その社会を維持することができるのは少数の知識を持った者だけになった。その後、徐々に文明は活力を失い、人々は知識のある少数の指導者にも不満を持ち始めた。これが、『小さな私』が増えすぎた結果なのです。だからロクサーヌ、あなたは自身の中にいる『小さな私』に気づきそれを超えることが衰退を防ぐ道なのです。
 そう言って、竜神様は消えた。まだ知りたいことは沢山あった。何故ここにペーシュウォーダがいるのか?それも疑問だった。だが、話を聞けただけでも有難く『ここまで来たかいがあった』と私は思った。
帰りにはすっかり暗くなってしまい、あの狭い山道を行くのは殆ど恐怖だった。
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