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ロクサーヌ (その55)

2140年7月18日(月)トーキョー
 私がバーチャルヴィジョンを使うことに、ラムは強く反対した。バーチャルヴィジョンを使うためには、チップからの情報を受け取る必要があるのだが、そのためには腕輪を外さなければならない。この腕輪は、チップからの情報を拒否する為の物だからだ。ラムはウシュパルクを、敵だとみなしていたので全く信用していない。だから、たとえ私の言うことでも、こうなると全く自分を曲げようとはしないのである。その為、私は当初の予定通り、図書館で本を調べることにした。
 本を読んでいるうちに、明治はいろいろな改革が行われているが、その中には信じられないほど悲惨なものがあると思った。私が驚いたのは、明治元年の神仏分離令である。1000年以上の歴史を持つ神社と仏教の習合を一片の命令で廃止したのである。人々の心をこのように簡単に引き裂くことができる維新政府とは何者なのだろうかと思った。
 さらに驚いたことには、明治天皇が亡くなられるときに、この廃仏毀釈について「一生の心残りである」と嘆かれたという話である。これでは、尊王というのは方便で、明治維新を実行した勢力が、天皇を始めとする日本という国を私物化したということではないか。
 調べれば他にもたくさんの悲劇が出てきた。明治維新が西国中心の勢力であり、関東以北の諸藩は概ね反対していたことである。その為、悲劇的な戦争が東北各地で行われた。そして維新の中心勢力であった薩摩はそれ以前にイギリスと戦争をして負けており、そのためイギリスの傀儡となっていたことである。
 江戸幕府は対抗上フランスの援助を受けていた。これは、外国の勢力を招き入れた内戦ではないか。その結果はどちらが勝っても、欧米の支配下にならざるを得ない。明治という時代は、江戸時代が防ごうとして必死になっていた、日本の植民地化を、攘夷を叫んだ勢力自らが招いた時代だったのだろうか。
 明治を作った人々は若者が中心だった。彼らは、江戸時代の長い平和に飽きていたのだろうか。江戸を作った人々は、関が原以前の戦国時代を知りその戦いを終わらせるために、江戸時代を作った。明治の人は真逆である。
 戦争の時代を知らないがゆえに、戦争を求め、しかも自分が勝つと勘違いしているのである。事実は、薩摩も長州もイギリスはじめとする外国に負けていて、その風下に立っていたのである。更にイギリスからは借金までしていて、その為維新後の金融はイギリスの支配下になった。
 私は、あの平和で静かな国だったというお坊さんの国が、なぜこのようにみじめな国になったのか不思議である。
もちろん人々は、真面目で平和を愛していたのだろうが、そうではない人々も多くいたのである。ことに、社会を主導すべき人々が何も知らない若者だったということが、無念に思える。その若者を導く人は、大方が維新によって殺されてしまったのである。
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