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ロクサーヌ (その64)

2140年7月26日(火)トーキョー
 私はラムと次郎を連れて、安東光輝の本を返すためにタワーにある図書館へ行った。
図書館の窓から外を見ると、下に公園が見えた。
木々の緑や赤い葉が美しく、静かでとても落ち着いて見える。
遠くには住民たちの居住区のタワーが並んでそびえ立っている。更にその向こうには港が見え、時々大きな客船が行き来する様子が見える。
 この大きな都市にはどのくらいの人が住んでいるのか。
目に見える範囲だけでも、百万は超えているだろう。
それにしては、とても静かなのだ。船も建物も、あるいは移動するための小さなコミューターも見える。だが、人影というものが見えない。あるのは、ただ静寂である。
 夜には、タワーも街路樹もライトアップされ、タワーには彩とりどりの絵模様が映し出される。メランコリックに光る観覧車さえもある。すべての通りは、虹色に輝いて見える。
一見すると賑やかなのだが、何か人工的である。
 ここでは、雨というものを見たことがない。風も常に心地よく穏やかなのだ。雨は、それを望めば降らせることも可能なのだろうが、代わりにミストシャワーのような霧がかかるだけである。
 私たちは、人の姿を求めて、街を歩いてみた。
ホテルのような看板もあり、カフェテラスもある。しかし、そこには人がいない。
カフェに入れば、アナウンスが迎え、好みの飲み物を伝えると薄暗く足下だけが青くまたオレンジ色に照らされる店内で、私たちの為のテーブルとイスと飲み物が用意されそこだけがボーっと明るく浮かび上がる。
静かに音楽が流れ、確かに快適ではある。
 カフェを出て、公園に行ってみる。そこで、初めて人影を見た。彼らは、何かゲームのようなものをしていた。
数人、あるいは、数十人か?木の陰に隠れたり、また走り出したりしている。
そのうちの一人に尋ねてみた。
 彼らは、言葉を使わずにコミュニケーションをとるゲームをしているのだという。
初めは、それぞれカードを持ちお互いがどんなカード持っているのか予想し、絵で描いて見せあい、それを当てるのだという。それを繰り返し、そのうち、全部当たるようになってきたら、さらに進めて、カードではなく実際に伝え合い、それを当ていくのだという。例えば、後ろ向きの人に向かって『こっちを振り向け』などと心で思うと、相手がすぐ反応し振り向くようになるのだという。
その話は、私も聞いたことがある。例えば、双子の子には実際できるそうだ。
それを、見知らぬ人同士が、始めているのだ。
この人たちは、ここではビジョニスタ『幻影を見るもの』と呼ばれ、この世界では異端とされていた。
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