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ロクサーヌ (その65)

2140年7月27日(水)トーキョー
 私たちが話を聞いた、ビジョニスタはカミラといった。
彼女は南アメリカから来たという。彼女には足の指が6本あり、彼女の生れた村では、彼女以外にも身体に何らかの異常があるのはそう珍しい事では無かった。
だが、年頃になってからは嫌な目にあってきたという。
 彼女が生れた国を捨てたのは、何時までたっても内戦が続いたからだ。
男たちにとっては、戦争は唯一の職業となっていた。やめれば、生活費を稼げなくなるという、そんな理由から戦争が続いていたのである。
 この世界では、争いが無くなった国もあれば、いまだに続いている国もある。
争いは、意外なことに、それが必要とされて起きていたのである。そして、その争いで使われた化学物質が、恐らく体の異常の原因だと思われていた。
 彼女たちは、いわば目印を背負って生まれてきたのだが、それがビジョニスタになった原因なのかはわからない。だが、ビジョニスタであるために、この国でも嫌な目にあったらしい。
 この国では、社会は均一性を重んじていた。ある一定の常識を、共通理解として持つことが、この社会のメンバーである条件なのである。それは、文明社会と言われるところでは、当然なのだが、この国は特にそれを重んじていて、また誇りに思っていた。
 誰もが、落ちこぼれないようにする、ことが大事なのである。
それは、一部の者にとっては、かえって極度の圧迫となり、心理学上の病と思われる症例が増えていた。それは、20世紀の話なのだが、その後も全員を大事にしようとすればする程、目指すこととは逆になっていく。
 この国では、一律に、一斉に、多様生を重んじようとする。論理的に自己矛盾を起こしてしまったのであるが、それになかなか気づけなかったのである。21世紀を通じて、多様化を図り、外国からの移民を増やしてきたのだが、22世紀になっても本質は変わらない。
 そして、平均的な社会から排除された者がビジョニスタと呼ばれるようになった。
人々は、ビジョニスタを恐れ、安全な空間に閉じこもったのである。
ビジョニスタの何が、人々に恐れられたのか?
ビジョニスタは、様々な人々で構成されているのであるが、一言でいえば非常識である、という点が共通している。
 多様性とはまさに、そのようなことなのだが、人々は、どんな人に対しても常識的であることを求めたのである。結果、常識はずれの外見、言動、行動をとる人は一律にビジョニスタと呼ばれるようになったのである。

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