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ロクサーヌ (その81)

2070年 錦糸町
 私kは、錦糸町公園のベンチに腰掛けている。既に季節は秋となり、木々の葉が紅くまた黄色く色付いている。
以前、あれは神宮外苑のイチョウ並木だっただろうか、車を止めて黄色い葉が風に舞い散るのを見ていた。その時一瞬だが、まるで霧がかかったように辺りは白く、凍り付いた空気のかけらがきらりと光り、ダイヤモンドダストのように思えた。
 そのことが不意に強く思い出されたのだが、その時一緒にいたはずの人が思い出せないのだ。懐かしさで胸が苦しくなった。なぜ、苦しいのか、この世界ではもうその景色が2度と存在しないからなのか、それとも、一緒にいたはずの人すら思い出すことができない、という孤独感なのか。
 いずれにせよ、今の私には、懐かしい記憶すら、はるかに遠い世界の幻となってしまった。
 私は、気を取り直して、喫茶店 貿易風に行った。この世界で唯一の話し相手だからだ。
 入り口のドアを開けると、全く意外なことに、そこにはヒトミとその夫がいた。
懐かしさで話を聞いた。彼女は、私が研究所を辞めた後、3年後に結婚して退職したという。夫は、杉原と言い、外務省で勤務していたそうだ。退官後は文京区の春日にいたのだが、立ち退きを迫られ今は錦糸町北口の大平町に住んでいるという。
 不思議なことに、彼女もやはりこの貿易風にいると、あの頃のままであった。
私は、杉原氏にこの変化の理由を尋ねてみた。杉原氏は、外務省時代はロシア・東欧課に勤務していたそうだ。
「この、新しい都市タワーシティーのプランは、正確にはわかりませんが、恐らく今後予想される放射能の危機に対応したものだろうと思います。この20世紀から21世紀にかけては温暖化の時代でした。その為、人口の増加と世界の発展が続いていました。
 しかし、来世紀には寒冷化とそれに伴う干ばつ、食糧生産の減少が予想されています。
そうすると、アフリカ、アジア、南米など急激に人口の増加した社会、地域は大混乱に陥るでしょう。その際問題となるのは、一義的には社会の混乱による新たな難民の発生ですが、もっと恐ろしいのは、中国やインド、ブラジルなどの政府が軍事力を使って問題を解決しようとすることです。
 また、伝統的に北の国では例えばヨーロッパやロシアなどは、寒冷化の時代には新たな戦争によって、支配領域を確保しようとする傾向があります。つまり、過去の歴史が教えるのは、寒冷化の時代とは、混乱の時代であり戦いの時代だということです。」
「それでは、あの都市は戦いに備えた形なのですか?」
「そうです。既に核ミサイルは、プラズマを利用したレーザー砲の登場で無力化されました。
今後の戦争は、宇宙空間からプラズマのレーザー砲で攻撃してくるでしょう。私が思うに巧妙なヨーロッパやアメリカは、成層圏の電離層にレーザー砲で穴をあけるのだと思います。直接の攻撃ではないのです。その穴を通して、宇宙線つまり放射能を発射してくるのだと思います。そのレーザーの穴は地上1kmから10kmのあたりで止まるでしょう。その穴を伝ってくる放射能の拡散範囲をコントロールするはずです。
 そのプラズマの技術を最も正確に開発したものが勝利者となるのだと思います。
あの都市のメタルは、放射能の影響を減少させるためです。そしてスクリーンのドームも放射能を防御するためです。日本は、攻撃しない道を選びました。だから、閉じこもるしかないのです。」
「タワーシティー以外はどうなるのですか?」
「おそらく、戦争が始まれば、放射能にさらされるでしょう。直接攻撃されなくても、大陸からの偏西風に乗ってくるでしょうし、とても守り切れないと判断したのだと思います。」
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