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ロクサーヌ (その89)

2140年 8月20日(土)トーキョー

私は再び、ビジョニスタであるアンさんの話を聞いた。

「あなたは、『心』を知りたい、と仰いましたね。
それを話す前に、私たち人間がどのようなものか、私が見た感想を話します。

私がその部屋で見ていると、地球の生命は、30億年前に誕生しました。

私が大事だと思うのは、今生きている人は皆、その子孫だということです。

つまり、生きているものは皆、その時から繋がっているのです。

 虫も花も鳥も動物も、皆生きている『あなた』と繋がっているのです。
回転する生命が、千切れていくつかの生命が生まれ、また千切れて多くの植物や動物になりました。それは、回転する螺旋階段のような遺伝子でつながり、生きている限りは、あなたに30億年分の遺伝子が残されています。

 その回転する遺伝子を取り囲む物質は、死とともに千切れて分散して消えてなくなります。でも、つながりを持つ遺伝子の周りにまた物質が集まり肉体となりまた生きます。回転する生命は、続いているのです。

 私は、2500年前に生まれたと言いましたが、その時の記憶であって、それ以前の30億年の記憶はありません。ですが、生きている以上は、その情報は私の遺伝子に刻まれているのです。これは、回転する銀河や、回転する惑星と同じなのです。

 私たちも回転しているのだと思います。人生が、回り舞台のように、あるいは回りながら踊る円舞曲のように、また輪廻する車輪のように、螺旋を描いて繰り返す。

 繰り返す人生で、様々な喜びや苦しみや、悲しみや、祈りを知るのです。それは、素晴らしいことだと思います。たった一度の人生で味わえなかったとしても、次の人生で味わえるかも知れません。その繋がっていて、回転している生命が、自分自身であり『心』なのではないでしょうか。

その上でどう生きるのか、唯じっとして受け身で居るのは、不自然だと思っています。回転して、活動するのが生命の言わば、宿命だと思っています。

私は、絵を描くのが好きで、唯美しい自然や人の姿を描いていたいと思っています。
正義や、生きる目的などを振りかざすのは、美しいとは思えないのです。
私の思うように『美しく』生きたいと思っています。

私は、ネアンデルタール人が初めて死者に花を手向けた、という話を聞いて、これ以上に素晴らしい発明はないだろうと思っています。

様々な兵器や、便利で快適な機械などの発明よりも、人を思う気持ちを花に託す、祈る気持ちをこのような形で表現した人々が素晴らしいのだと思っています。」

私はアンさんの話は長いと思っている。
それでも、アンさんは良い人なのだろうと思った。

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