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ルーム・ノヴァスの伝説 (その 31)

 アラン教授が再び研究室にやってきたのは、セルナ君がとんでもないアイデアを持ち出してから2日後だった。

「オリガ君、この前のセルナ君のアイデアなんだが、君はどう思う?」

 アラン教授が私に意見を求めることは殆どなかった。
よほど悩んでいるのか?
それとも私の同意を求めるためか?

「正直に申し上げて、私は難しいのではないかと思います。
と言いますのは、今回のケースはデータが不足しすぎていると思うからです。

 日本チームでの実験は、この地球の歴史の再現と予測でした。

 地球に関しては、何と言っても私たちのホームグラウンドですから地質学、気候学、海洋学、天文学そして歴史学、地理学とあらゆる分野の研究の積み重ねがあり、その膨大なデータが取り込まれていました。

 ですが惑星ルーム・ノヴァスの場合は、殆どあのタブレットと無人探査機のデータだけです。

 たったそれだけでは、何が起こるのかそれこそ予測不能なのではないでしょうか?」

「しかし、セルナ君は自信ありげだったね。それに日本チームのことまで調べていたんだ。

 とても前向きではないかと思う。僕は、セルナ君のその努力を評価したいと思っているんだ。」

「はい、その点については私も素晴らしいと思いました。」

「僕はね、オリガ君。君にも、もっと積極的に関わってもらえないかと思っているんだ。
 
 タブレットの解読も、君だけでは予定通りに終わらせるのは厳しかったのではないのかね?

セルナ君は随分頑張ったように思うけどね。」

 アラン教授は、私の意見ではなく、やはり同意だけが欲しいのだ。
そうすれば、下からの希望を取り入れた、という形にできるからだ。

「はい、仰る意味はわかりました。一つお伺いしたいのですが、セルナ君はどういうわけでこの研究室に来たのですか?

 以前はバックエンドのプログラマーだったようなことを聞きましたけど。」

「彼は、モスクワからの推薦があったんだよ。出身がコーカサスのアララト山の近くだったらしく、モスクワとしてはロシア連邦出身者をこの研究に参加させたかったようだ。

 ただ聞いた話では、コーカサスの地元の少数派の宗教の神官の家系でクリスチャンではないらしい。でもトルキスタンとの国境近くだから、宗教の問題はとりわけ敏感な地域だ。

 モスクワにとって、イスラム教徒でもクリスチャンでもないというのは、ある意味宗教的に開かれた国だとアピールできる要素でもあるわけだ。つまり、研究者としての能力よりも、政治的な力が働いた人事のようだということだよ。」

 ということは、セルナ君の仕事ぶりをアピールすることは、アラン教授にとっても政治的に有利だということか。モスクワからの援助が期待できる、ということなのか?

 これ以上考えても、政治のことは分からないし、分かりたくもない。
もうこの話は終わりにしたいと思った。

「分かりました、私もセルナ君のアイデアを成功させるよう努力します。」
 本当は、教授の指示に従います、と言ってやりたいところだが、そうするとまた話が蒸し返しになると困るのでやめた。

 それよりも、セルナ・ラガシュとは一体何者なのだろう?
唯のバックエンドのプログラマーが、モスクワの目に留まる?
そんなことがあるのだろうか?

 あるとすれば、その神官としての家系に何か秘密があるということか?
そんな力のある一族ということか?

 やめよう、こんなことを考えても無駄だ。
とにかく今は、仕事に集中するしかない。精神を保つために。


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