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ルーム・ノヴァスの伝説 (その 62)

地球の空の上で。

丁仙之がウシュパルク教授に、報告していた。

「教授、連邦政府のメルブ課長に確認しました。どうやらERUで意識不明になった研究員はセルナ・ラガシュという者だそうです。」

「セルナ・ラガシュ? 初耳だな。そんな研究員は聞いたことがないな。」

「はい、私も初めて聞く名前だったので、どんな人物なのか経歴を尋ねてみました。
すると、ロシア連邦政府の強い推薦で急に決まったのだそうです。」

「ロシア連邦?ロシア人なのか?」

「それが、ロシアと言ってもコーカサス地方の出身で、代々地元宗教の神官の家系だそうです。」

「そんな者が何故、研究員になったのだ?」

「ロシアは、コーカサス地方では、宗教や民族問題を抱えていて、紛争が絶えないため、困っていたようです。で、ラガシュ家は、かなり古くから地元で勢力を持っているらしく、独自の民兵を組織するだけの力があるようなんです。」

「その力はどこから出てくるのだろう?」

「彼らは、元はメソポタミアのラガシュ王国の末裔だと主張しているらしく、その宗教というのもキリスト教やイスラム教、ユダヤ教などと戦って生き抜いてきたようなんです。」

「メソポタミアと言えば、シュメール人の国か?」

「そうです。そのシュメールの古代の記録に確かにラガシュ王国が出てくるのです。調べたところ、その王国はシュメール人の国の中でも独特な歴史を持っていたようです。

他の国とは違い、都市国家同士の連合体を貫いて、ラガシュ王家が支配者ではなく、ある宗教の神を支配者としていたというのです。

その為、他の国では、王名を記録していたのに、ラガシュ王国では王名を記録していなかったと言います。今、伝わっているのは、のちの時代になって作られたものらしいです。」

「そのラガシュ王国の末裔が生き延びていたというのか?」

「彼らは、そう主張しているようです。ロシア連邦政府としては、その地元での力をCTUとの対抗上利用しようとしたのでしょう。」

「しかし、その研究員がシミュレーターの中に入ったのは何か理由があるのだろうか?」



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ルーム・ノヴァスの伝説 (その 63)

連邦政府会議室で。

連邦政府のメルブ課長はERUと、CTUの合同対策会議を主催した。
火星のそばにある彗星、及び新しく出現した彗星に対する対策である。

CTUのウシュパルク教授が発言した。
「我々の観測によれば、彗星は拡大を続けて地球に近づいています。

ただ、その出現の時期から考えると、惑星ルーム・ノヴァスの発見と無関係ではないように思えます。と言いますのも、あの彗星は、近くにある小惑星の破片を吸収して大きくなっているように思えるからです。

その様なことは、何らかの知的生命体の仕業であると考えるのが妥当と思えるのです。そこで、アラン教授にお尋ねしたいのですが、タブレットの解析の結果はどうだったのでしょうか?」

アラン教授が発言した。
「結論から申し上げると、あのタブレットは、我々の想定した通常の文書資料とは大きく異なっていました。詳細はオリガ研究員から説明しますが、あのタブレットは生きているのです。」

ウシュパルク教授が驚いて聞き返した。
「生きている、とはどういう意味ですか?生命体なのですか?」

オリガ・スベトラーナが発言した。
「そのことにつきましては、私の方からが説明いたします。」

オリガは、タブレットの解析によって起きた事を詳細に説明した。

「つまり、あのタブレットはそれを読む者の考えに反応し、対話していると思えるのです。そして、私や、セルナ研究員が経験した事は、あのタブレットの世界に取り込まれたとしか思えないのです。

さらに言えば、今私たち全員が経験しているこの世界での出来事が、すでにあのタブレットに取り込まれた結果起きている。タブレットの中の世界に私たち全員が取り込まれているのではないかと思うのです。」

ウシュパルク教授が確認した。
「では、君の考えではあの彗星もタブレットの世界の中で起きていることが、現実になって我々の目の前で起きていると、そういうことかね?」

オリガが答えた。「はい、そう思います。」

ウシュパルク教授が発言した。
「実は、私たちの観測でも不思議なことが起きているのです。あの彗星は、近くにある物体を何らかの方法で消滅させているのです。ctuで発射した攻撃用ロケットも、爆発したのではなく、彗星の手前で消滅してしまったのです。」

メルブ課長が発言した。
「今までの情報を総合すると、タブレットと彗星は関係しているということですね。そうであれば、この観測調査、及び対策は合同で協力して行う必要があるのではないでしょうか?」

アラン教授が発言した。
「私もそう思っています。オリガ研究員の話には私は当初驚き、にわかには信じ難いと思っていました。しかし、彼女が研究員としての資質を疑われることを覚悟で話してくれたので、私も信用しました。

今、ウシュパルク教授が彗星の状況を詳しく説明してくれたので確信しました。あの彗星は、ルーム人の文明と関係があるのでしょう。」

ウシュパルク教授が発言した。
「分かりました、今後は協力して調査してゆきましょう。」

ルーム・ノヴァスの伝説 (その 64)

連邦政府会議室で。

会議中に、突然セルナ研究員が声を上げた。
「今、僕が、もう一人の僕が、砕け散りました。」

アラン教授が驚いて尋ねた。
「どうしたんだ、セルナ君。何を言い出すんだ?」

「今、見えたんです。もう一人の僕が、彗星と重なって砕けたんです。」

そこへ、連邦政府のメルブ課長の下に職員が駆け寄って何事かを伝えた。

「たった今、報告がありました。火星付近にいた彗星と、もう一つの彗星が衝突した模様です。両方とも爆発したということです。」

ウシュパルク教授が発言した。
「彗星が2つとも爆発したのですか?」

「はい、2つともに爆発したのです。」

続いて、また別の職員が走ってきた。メルブ課長が発言した。
「皆さん、大変です。民主アメリカ連邦からの報告で、複数の宇宙船団らしきものが観測されたそうです。」

ウシュパルク教授が、緊張した面持ちで尋ねた。
「宇宙船団が観測されたのですか?それはどこでですか?」

「詳しくはまだわかりませんが、惑星ルーム・ノヴァスの方向から来ているようです。」

オリガ研究員が、アラン教授に小声で話した。
「教授、もしかすると、惑星ルーム・ノヴァスから脱出したというジームラ・ウントの宇宙船ではないでしょうか?」

アラン教授が同じく小声で答えた。
「うむ、その可能性はある。だが、そうだとすると彼らは地球に向かっているのだろうか?」

「ペーシュウォーダの『創世記』を知っているのならば、地球に向かっていることも考えられます。」

アラン教授が全員に向かって話した。
「皆さん、セルナ研究員の話によれば、かつて地球にルーム人が来たのかも知れません。そして、ペーシュウォーダの『創世記』という書物をセルナ研究員が見たことがある、と言っていました。

それらを考慮すると、今回の宇宙船は惑星ルーム・ノヴァスを脱出したジームラ・ウントの人々の可能性があります。」

ウシュパルク教授が発言した。
「だとすると、彼らの目的は、地球への移住なのでしょうか?」

「恐らくそうだと思います。その場合、我々と彼らの文明の差を考えると、征服される可能性もあります。」

メルブ課長が発言した。
「我々にできることは、対策はどうすればよいのでしょうか?」

アラン教授が答えた。
「ペーシュウォーダの『創世記』を見つけることです。それを解読して、彼らを知ることで、文明の差を埋めることができるかもしれません。」

ルーム・ノヴァスの伝説 (その 65)

地球の空の上で。

連邦政府での会議の後で、丁仙之とウシュパルク教授が相談していた。

「教授、会議ではペーシュウォーダの『創世記』を探すと言っていましたが、具体的にはどうするのでしょうか?」

「先ずは、セルナ研究員の記憶をたどるしかないだろう。彼らの話では、セルナ研究員の実家にある可能性が高いのだから。」

「でも、セルナ君はその点についての記憶がなさそうでしたね。」

「そうだ、彼は惑星ルーム・ノヴァスの人間だといっていた。しかも、オリガ君によれば彼らは自動人形でメタルの皮膚をしていたという。だが、セルナ君はその点も曖昧だ。もう一人の自分がいたといっているのだからね。」

「そのもう一人は、彗星となって爆発したわけですよね。そうすると、セルナ君の記憶をたどるのは難しい、ということですか?」

「うむ、果たして回復するのか、わからない。」

「教授は、何かお考えはありますか?」

「うむ、今私が思っているのは、もう一度、ロクサーヌを使うことができないか、ということだ。ロクサーヌは以前にペーシュウォーダと思われるものに会っているのだからね。」

「でも、kの行方が分かりません。それはどうされるお考えですか?」

「kについては、メモリーバンクに彼の記憶データが登録されているだろう。それを再起動できないかと考えている。」

「では、kの記憶を再起動させて、ロクサーヌを動かすということですね。」

「そうだ、その為には日本チームの協力が必要だ。丁仙之君、君は日本チームにその件を頼んでみてくれ。」

「はい、わかりました。早速確認してみます。

しかし、kというのは何者なんでしょうか。普通の人間であれば、メモリーバンクの記憶を動かそうにも、本体が無いのでは無理ですよね。」

「kは、彼自身の話では、まるで何度も生まれ変わりを繰り返しているようだ。

記憶だけがあって、本体はないのだよ。名前も不明だ。幾つもの名前を持っていたようだ。彼の記憶が、つまり意識が、幾つもの身体に移動しているようなのだよ。

だから、普通であれば再起動などはできないのだが、彼の場合は記憶が、本体のようなのだ。それも、不連続な記憶なのだがね。」

丁仙之は日本へ向かった。

ルーム・ノヴァスの伝説 (その 66)

研究室で。

アラン教授が、セルナ君と話していた。
「セルナ君、君はペーシュウォーダの『創世記』を見たといっていたね。それが、今何処にあるのかわかるかな?」

「それが、もう一人の僕がそう言っていたような記憶はあるのですが、実際には僕は何処でそれを見たのか覚えていないのです。」

「君の故郷でその様な話はしてないのかね?」

「はい、僕の記憶する限り故郷で見てはいないと思います。」

「では、何処か思い当たるところはないだろうか?」

「うーん、そうですね、もしかするとですけど、僕たちの祖先はメソポタミアから来たと言っていましたから、ラガシュの遺跡を探れば何かあるかもしれません。でも、全く自信はありません。」

アラン教授は落胆した様子で、「そうか。記憶にないのは仕方がないのだけど。だが、時間がないのだよ。」と言った。

「万一宇宙船団が、地球を攻撃するようなことがあれば、対抗する手段として彼らと同程度の武器が欲しい。また、そうでないとしても、何らかの交渉をするには、それなりの武力が必要だ。

彼らが、ジームラ・ウントの船団だとすれば、地球に移住を希望するだろうからね。何か良い方策はないだろうか?」

アラン教授はしばらく黙ってセルナ君の反応をうかがっていた。しかし、セルナ君は以前とは別人のようにぼんやりしていた。

アラン教授は突然、何かを思いついたように、顔を輝かせてセルナ君を見た。
「セルナ君、君の脳を検査してはどうだろうか?何か異変があったにせよ、調べてみないことには何も始まらない。その結果次第で何か良い対策ができるかもしれない。」

「あの、検査とはどういう検査でしょうか?」

「まずは、脳に何らかの損傷などがないか、もう一度詳しく調べることからだ。
いいね、受けてくれるね?」

「はい、以前脳波の検査を受けた時には何も問題はないはずでしたが。
・・・もう一度受けてみます。」

「よし、そうと決まれば、医務室の方に連絡してくるよ。僕が直接頼んでくるから待っていてくれ。」

そう言うと、アラン教授は研究室を出て行った。

ルーム・ノヴァスの伝説 (その 67)

翌日、セルナ君の検査が始まった。

脳波には異常はないのだが、スキャンの結果に問題があった。

アラン教授が尋ねた。
「マヌエル医務官、スキャンの結果はどうですか?」

「教授、脳がかなり損傷しています。と言うよりも、破損している、まるで何か鋭い刃物でえぐり取られたようになっています。ただ、その残りの部分は正常に動いているのです。なので、身体能力には異常がないのです。」

「それは一体どういう事ですか?」

「うーん、普通の人間とは違っているようです。つまり頭蓋骨の中には普通の人間の倍の容量があった。そして、現在残っている脳だけでも普通の人間の脳と変わらない機能がある。それから考えられることは、セルナ君の脳は2つあった可能性があります。そして、もう一つの脳が失われた、と思われます。」

「記憶の部分、海馬の部分はどうなのですか?」

「それも問題はないのです。ただ、海馬も2つあったのではないかと思われます。」

「その失われた脳の記憶はどうなったのでしょうか?復元可能でしょうか?」

「それは、何とも言えません。出来る限りやってみますが。」

「何か方法はありますか?」

「記憶というのは、海馬に集中して保存されますが、脳の表面にも保存されることがあります。新しい記憶は海馬に、古い記憶は大脳皮質に保存されます。ですから、失われた脳の記憶も、残っている大脳皮質に保存された可能性はあります。」

「では、その記憶を復元する方法はありますか?」

「脳の神経細胞、記憶エングラムをデータ化してみましょう。結果はこちらから報告します。」

「有難うございます。良い知らせを待っています。」

アラン教授が研究室に戻ってきた。

「教授、セルナ君の様子はどうでしか?」

「うむ、やはり僕の予想通りだった。彼の脳は2つあったんだ。恐らく、惑星ルーム・ノヴァス人の脳が破損したのだろう。だが地球人としての脳は残っている。」

「では、記憶が戻るのですか?」

「それは、まだ分からないが、マヌエル医務官がデータ化してくれるだろう。そうすれば復元の可能性がある。成功を期待して待ってみよう。」

私は、まだ教授の考えが理解できないのだが、とにかくセルナ君に危険がないことを祈った。


ルーム・ノヴァスの伝説 (その 68)

丁仙之は日本の研究チームに向かった。

『日本チームはまだ、タブレットのことも、彗星のことも、そして宇宙船団のことも知らないはずだ。どうやって、kの記憶データを起動させるように説明したものか。

先ずは、kの記憶データの起動ができるのか、その確認からだ。』

日本チームは、靖国神社にほど近い静かな通りにあった。

「高坂教授、ご無沙汰しています。CTUの丁仙之です。」

「やあ、久しぶりだね。ウシュパルク教授から、話は聞いているよ。kの記憶データのことだね。」

「ああ、はい、そうです。突然ですみませんが、起動できるでしょうか。」

「それなのだが、実はkの記憶は現在整理中なのだよ。」


「整理中と言いますと?」

「kの記憶データと言っても、あれは特殊なもので、k自身だと言ってもよいくらいだ。
つまり意識がそのままで残っていて、現在も動いているのだ。そして、k自らが言うには、過去の記憶を整理しているらしいのだよ。」

「どういう意味なのでしょうか?」

「彼は、ロクサーヌを作ってそれをシミュレーターの中で稼働させたのだが、その際に彼の意識も同調させていた。ところが、予想外なことに、我々には予想外だという意味だが、ロクサーヌは次元の異なる宇宙へ行き、別の歴史を経験してしまった。

kも同時に別の歴史を経験したのだが、それが彼の意識に過剰な負担をかけたようだ。
つまり、自分で理解することができないようなのだ。その為、彼は今ロクサーヌを作る以前の記憶を自ら復元させて、自分なりの理解をしようとしている。」

「自分なりの理解とは、実際には何をしているのですか?」

「彼は、彼自身の経験を物語にしようとしているのだ。断片的な記憶と分裂した人格、断絶した経験それらを統合しようとしているのだろう。」

「それは、成功するのでしょうか?」

「まあ、kだけにしかそれはわからないね。」

「それが、完成するまで、ロクサーヌを起動させることはできないのでしょうか?」

「そのロクサーヌの起動についても、私たちよりむしろウシュパルク教授の方が詳しいのではないかね。今、言えるのは、kは自分の中に入り込んでいるので、外部からのアクションに応答することが難しいということだ。」


ルーム・ノヴァスの伝説 (その 69)

地球の空の上で。

丁仙之が日本から戻ってきた。

「教授、日本チームに確認しましたが、現在kは記憶データを整理中で起動できそうにありません。どうしましょうか?」

「データの整理中とは、どうなっているのだ?」

「k自ら、ロクサーヌを作る以前の記憶を整理し、物語を作っていると言っていました。ロクサーヌを起動させていた当時の負荷が大きく、精神が混乱していたようで、それを整理してるようです。」

「やはり、別の次元の世界を経験した事で精神が乱れたということか。確かに、普通の人間の精神では理解することが困難だろう。だが、その整理作業を待っていたのでは、間に合わないかもしれない。」

「はい、どうにかk抜きでロクサーヌを起動させる方法はないのでしょうか?高坂教授が言うには、ウシュパルク教授の方が詳しいだろうと言っていましたが。」

「うむ、方法としては、ERUの量子コンピューターを使うしかないだろう。ロクサーヌは複数の世界に同時に存在している可能性がある。その内の一つを特定して起動させる。それを行うには、我々のコンピューターでは無理だろう。」

「ERUは今、どうしているでしょうか?」

「セルナ君の記憶を回復させると言っていたが、どうなったのかまだ連絡はない。宇宙ステーションの設備では無理かもしれない。丁仙之君、すまないがERUと連絡を取って確認してくれるか?」

「はい、分かりました。確認してみます。」

研究室で。

「アラン教授、CTUの丁仙之様からメッセージです。」研究室のメッセージアナウンスが聞こえた。

「こちらにつないでくれ」アラン教授が応えた。

「お忙しいところすみません。セルナ君の記憶を回復させる件ですが、どうでしょうか?」

「今はウイーンの医療機関でデータの復旧中だ。作業が完了次第そちらにも連絡するよ。」

「はい、分かりました。有難うございます。」

「ところで、丁仙之君そちらの状況はどうなっている。kは見つかったのか?」

「いえ、それが記憶データの整理中で起動できそうにないのです。それで、ロクサーヌを単独で起動させたいのですが。それについてご相談なのですが、量子コンピューターを使用させて頂けないかと、ウシュパルク教授が申していました。」

「そうか、そうだね。今回は、協力しながらやっていきたいと僕も思っているので、承知したとウシュパルク教授に伝えてくれたまえ。」

「有難うございます。早速伝えます。」

ルーム・ノヴァスの伝説 (その 70)

マヌエル医務官から連絡が来た。

「アラン教授、セルナ君の記憶データを映像化したのですが、非常に不鮮明な箇所が多いのです。残念ながら、これ以上は私たちの手に負えないようです。」

「いえ、それだけで十分です。後はこちらで対応します。ご協力に感謝します、マヌエル医務官。」

アラン教授は、CTUにも連絡した。

「オリガ君、このセルナ君の記憶データをシミュレーターの中に統合してくれるかな。」

「はい、分かりました。でも教授、それは不十分なデータではないのですか?」

「大丈夫、不十分でも量子コンピューターが補正してくれるはずだ。それに、完全なデータである必要はないのだよ。ロクサーヌを使って探すのだから。」

翌日、CTUのウシュパルク教授と丁仙之研究員が来た。

「ウシュパルク教授、お待ちしていました。セルナ君の記憶データをシミュレーターの中に統合したのですが、データが不十分なところもあり、完全に再現することができないのです。」

「そうですか、でも記憶データを統合できただけでも助かります。こちらは、ロクサーヌの位置を特定するところから始めますので。早速ですが、オリガさんお願いできますか。」

私は、量子コンピューターでロクサーヌの時空間位置情報をサーチする。
しかし、複数の位置情報が表示される為、ウシュパルク教授に確認した。

「ウシュパルク教授、ロクサーヌの時空間位置情報が複数表示されますが、どうしましょうか?」

「確か、最後にサマルカンドへ行くと言っていましたので、サマルカンドの近くで特定できますか?」

「2つあります。一つは西暦720年頃、もう一つは西暦875年頃です。」

「では、西暦875年でお願いします。」

ロクサーヌは西暦875年のサマルカンドに特定された。
アラン教授がウシュパルク教授に尋ねた。

「これから先は、どのように進めるお考えですか?」

「まず、ロクサーヌに指示を出さなければならないのですが、誰がそれを行うのかが問題なのです。」

ルーム・ノヴァスの伝説 (その 71)

研究室で。

誰が、ロクサーヌに指示を出すのかを巡って話し合いが始まった。

ウシュパルク教授が発言する。
「私たちは、ロクサーヌと色々あったので、信頼されていないと思うのです。
出来れば、ERUのメンバーでお願いしたいのですが。」
 
 アラン教授が反論した。
 「ロクサーヌは日本チームであなた方が開発した自動人形ではないですか。我々としては、あなた方が行かれる方が宜しいと思っています。」

ウシュパルク教授は、かつてロクサーヌを使って文明の衰退について調べた際のいきさつを説明した。
「以上のように最後は、ロクサーヌの友人を拘束してしまったのです。ですから、今回は難しいのではないかと思っています。オリガさんはどうでしょうか。彼女ならロクサーヌも信頼するのではないでしょうか?」

アラン教授が反対した。
「オリガ君は、この研究室の重要なメンバーで、シミュレーターや量子コンピューターのオペレーションを担っているのです。彼女がいなくなれば、調査は不可能です。

それよりも、丁仙之君はどうですか?情報の管理だけで、オペレーションはできないでしょう。それに、彼はロクサーヌとは何度もあっていますから、話もすぐ分かるのではないですか。」

丁仙之が発言した。
「今回の目的はペーシュウォーダの『創世記』を探すことですよね。しかも、セルナ君の記憶データの世界に行くわけですよね。でしたらセルナ君がベストではないでしょうか。」

セルナ君が発言した。
「僕は、ロクサーヌと会った事がありません。しかも今は記憶も曖昧なので、僕が行ってもお役にたてるのか自身がありません。」

アラン教授が少し苛立ちながら発言した。

「分かりました。こうしたらいかがですか? 丁仙之君とセルナ君が一緒に行くのです。そして、丁仙之君は今回のミッションの目的をロクサーヌに説明して、セルナ君を紹介してください。

セルナ君はその後、ロクサーヌと一緒に『創世記』を探す。どうですか?ウシュパルク教授。」

ウシュパルク教授が、やむを得ず了承した。
「分かりました。その案で行きましょう。丁仙之君、いいね。しっかり頼んだよ。」

丁仙之とセルナもやむを得ず了承した。

「はい、決定に従います。」



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