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『kの回想』 7

「ちょっと待ってください、マスター。彼は芦名思魔なんですよ。もし、安禄山だとすれば、芦名思魔はどうなるのですか?それに安禄山は1300年前に死んでいるわけですから、今ここにいるのというのは無理がありますよ。」

「清原君の言うことも分かるよ。でもね、僕は芦名思魔という名前を本人から聞いていないのだよ。君がそう呼ぶから、そうだろうと信じるだけだよ。

安禄山という名前もそうだ。たまたま歴史上の人物と同じ名前なので変な感じはするけど、そうでなければ、本人が安禄山と名乗っている以上それを信じない理由は僕には無いのだよ。

もちろん、疑問な点はあるよ。第一に芦名思魔は一体どこへ行ったのか?何故アパートはパキスタン人の名義だったのか。これは芦名思魔に関する疑問だ。

それとは別に安禄山が何故現代にいるのか。病気なのか?病気でないとすればどういうことか?タイムマシーン何て事は無いだろうし。第一外見が芦名思魔とはどういうことか?

この2つの疑問は、でも別々に解いていかないと、同時には難しいよ。もちろん両方が絡み合って複雑になっているのは分かるけど。
一度整理して別々に考えた方が判りやすいと思うんだ。どうだろう?」

「それは、そうだとは思いますが。」

「その為には、まず安禄山さんは安禄山でいいじゃないか。その上で解決の道を探ることにしよう。」

私は、スッキリとは行かなかったが、マスターの言うことも一理あると思った。というより他に方法が思いつかず、従うことにした。

「そういうわけで、安さん、あなたが何故ここにいるのか今は分からないけど、
その前に芦名思魔とは何者だったのか、それとパキスタン人の貿易会社、その会社のアシュクを調べてみよう。そうすれば何か分かるかも知れません。」

安禄山も納得したようだった。
私は、安禄山と一緒に調べることにした。
「安さん、まず芦名思魔の実家に行ってみましょう。マスターはどうしますか?」

「僕は店があるからね。貿易会社の方を聞いてみるよ。」

「分かりました、じゃあお願いします。」

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『kの回想』 8

津軽には古来、安東氏族が豪族として君臨していたが、やがて秋田へと移っていった。
秋田には安東姓を名乗る武士団がいた。その出身は蝦夷の系譜と言われている。

秋田県角館には、芦名一族がいた。彼らは元は、会津であり、更に遡れば鎌倉時代の三浦氏にたどり着く.三浦半島には葦名という地名があり、それから葦名・芦名と名乗るようになったという。その近くに熊野権現から来たと言う十二所神社がある。

直接の関係は不明だが、西館の近くにも奥州藤原氏が創設した十二所神明社・十二天神社があり、十二所という駅もあった。

私と安さんは、芦名の実家、秋田県比内町の西舘を訪れた。大館からは花輪線で扇田で降り、そこからはバスである。バスを降りて川沿いに山のほうに歩きほぼ人家も絶えたような地域であった。

近隣で尋ねると、芦名という表札の家があった。母親は、旧姓を安東と云い芦名家に嫁いでいたのだが、若い頃から癇の強い性質で、芦名思魔を生んですぐ、病を得て、実家にもどったらしい。何の病だったのかは、ハッキリとは言わないが、ノイローゼのような状態であったらしい。

父方の芦名家は元は会津の武家だったようだが、江戸時代には藩主と共に角館に移り、明治の頃に鉱山開発の仕事で十和田湖近くの小坂に来たらしい。その後鉱山も閉鎖となり、木材を商っていたが、父の代にはそれも上手くいかず、資金繰りに窮していたという。芦名が13才の頃に行方不明になっていた。

その後芦名は、名目上母方の叔父の安東孝季氏に引き取られたが、実際には芦名の家に一人で住んでいたらしい。
そして大学入学と同時に東京へ出た為、芦名家には今はだれも住んでいない。

叔父の安東孝季は、無口な性質で、清原に芦名の家の鍵を渡すと、あとは何も言わなかった。

芦名の部屋には本と、音楽CD以外は特に何もなかった。唯、古びて今にも砕け散りそうな封筒が、本の間に挟んであった。中には奇妙な文字で書かれた手紙の様なものが入っていた。
その手紙を写真に撮ると、他には何も手掛かりはなく、東京に戻ることにした。

『kの回想』 9

貿易風のマスター安倍は、池袋の東風貿易を訪ねてみた。

雑居ビルの3階にあるその事務所には、男が2人と女が1人いた。
ミルザという男に芦名思魔のことを尋ねたが、聞き覚えの無い名前だと言う。

アパートにいるのは、アシュクという男で、今はパキスタンにいて2週間後に戻る予定だという。
会社の代表はムスタグと言い、今は席を外していて戻るかどうかは不明だった。

ミルザは背の高い男で、アラビア風の長く白い服を着ていた。
もう1人の男は、短い髪で、黒いサングラスを掛け黒のスーツを着ていた。

貿易会社の社員には、不似合いな印象であった。
女の方は、日本人の様で、事務員風であった。

結局何もわからないまま、事務所を後にした。
1階のポストには東方貿易日本支社と書いてあった。

近くを歩いていると、ビルの非常階段で、ぼんやりと下を向いて座っている子供がいた。
不審に思い、声をかけると、母親の帰りを待っているという。

母親は東方貿易で働いていたのだが、数日前から帰ってこないのだという。
会社で聞いても、母親のことは誰も知らないというので、ここで待っているというのだ。

母親の名前は、ロクサーヌと言った。
子供は羽栗翔と名乗った。父は死んだという。

子供は黒い髪と明るい茶色の瞳で、浅黒く掘りの深い顔立ちだった。日本人には見えなかった。
芦名と何か関係があるのではないかと思った。

子供の家は、歩いて10分程のアパートだった。部屋の表札に名前はなくポストには、東方貿易と書いてあった。

やはりここは、芦名の部屋ではないのだろうか。
だが、清原も安禄山も、こんな子供がいるとは言ってなかった。
部屋の中に入ると、女物の靴と衣服はあったが、男の物はなかった。

芦名の部屋とは違うのだろうか、しかし東方貿易の名義であることは確かだ。


芦名思魔は、722年のソグディアナにいた、ロクサーヌという女商人として。

彼女はキャラバンの一員として、ザラフシャン山脈から南へ下りバクトリアへ移動中だった。もうすぐアムダリア川を越える。そうすれば、そこはもうバクトリア人の世界だ。アラブの軍隊からは逃げおおせるだろうか。

ここで、ロクサーヌという女性を助ける為に来たのだろうか。誰かを助ける為に来たはずだったが、それがこのロクサーヌなのか?

しかし、僕の意識は芦名思魔のままで身体はロクサーヌになっているのは何故だ。意識だけが移動しているのか、自分はいったい何者なのか。

疑問は尽きないのだが、今は考えている余裕はない。とにかくここを脱出し、安全な場所に行かなくてはならない。

このまま南下すればヒンズークシ山脈を越えインドに入る。2001年の世界ではアフガニスタンからパキスタンへ入ることになるだろう。

そこからどうするか?722年の世界ではこの辺りもアラブ人に征服されているだろう。ペルシャは既に滅び、インドにも安定した王権はない。やがてチベット人が動き出すだろう。
つまり、ここは無法地帯ということだ。

更に南へ下って海を目指すか。船に乗って南インドへ逃げる。それが一番安全かも知れない。しかし、このキャラバン隊はどこまで行くのか?海までは行かないだろう。
そうすると、東へ行って中国を目指すのか?

ロクサーヌはキャラバン隊の隊長に呼ばれた。不思議な女がいる、という噂が耳に入ったのかも知れないと思い心配だった。

隊長はロクサーヌにこう言った。
「ここから、敦煌へ行くキャラバン隊がある。お前のことは聞いているが、南へ行くのは大変困難な道のりだ。

東の敦煌へ行くキャラバン隊と一緒に出発した方がよい。東へ行けば、そこには我々の仲間が大勢いるし安全だ。

女性でも行くことのできる道のりだ。お前さえよければ、紹介してあげようと思っている。」

ロクサーヌはその言葉を信じて、東へ行くことにした。今はまず敦煌を目指そうと決意した。

『kの回想』 10

安禄山は、このところスポーツジムに通って身体を鍛えていた。芦名思魔の身体は華奢で、中性的だったのだが、安禄山はそれが納得できなかったのだろう。

午前中は、ジムで運動し、午後は中華料理屋でアルバイトをして、夕方4時頃にはアパートに戻って休み、6時頃また起きて貿易風で食事をするという具合であった。

マスターが声をかけた。「安さん随分いい肉体になってきたね。2か月前とは別人だね。」

「まだ全然です。前は体重も100kg以上あったんです。今はやっと70kgですから。もっと運動して食べないと。以前の自分に戻りたいんですよ。」

「そうですか、でも、以前の芦名さんは本当に女性と間違える位に華奢で優雅な感じだったけど、安さんになってからは、すっかりマッチョになってしまったね。」

「心が変わると、肉体も変わってしまうんですかね。」と清原も最近は、安禄山であることを受け入れていた。

「でも編ですよ、自分としては本来の自分に忠実でありたいだけですけど、皆さんから見ると、別人になってしまうんですよね。」

「ところで、翔君はどうしています。」

「ああ、あの子は今は安さんと一緒にいるんだよ。」

「そうなんですか?」

「ええ、まあ自分も一人だし、あの子はまだ小さいから、一人でアパート暮らしは危ないと思って、自分のアパートで一緒に住んでいるんですよ。

時々あの子のアパートの様子を見に行ってますけど、母親が帰った様子はないですね。」

「でも、可哀そうですね。父親も居ないし、母親も居なくなるなんて。学校は行っているんですか?」

「まあ、行ってはいる様だけど、あの通り見かけも変わっているから、友達もいないんじゃないかな。」

「父親は病気で亡くなったのですか?」

「いや、事故だった様だけど、小さかったから本当のところは良く分からないみたいだ。」

「母親の手掛かりは何かあるんですか?」

「母親と言えば、少し前におかしな夢を見たんだ。自分と芦名とロクサーヌの3人が話をしているんだよ。」

『kの回想』 11

その夢は、芦名がシルクロードを旅していて、サラズムという町で休んでいた時のことです。

芦名は自分自身がロクサーヌという女性になって、キャラバン隊の一員として、中国へ向かっている、唐の長安に行く所でした。

そうすると、あの子の母親が現れて、子供を探しに来たと言うんだ。

母親であるロクサーヌは芦名に、こう話しました。
「私は、事故で家に帰れなくなり、病室にいたんです。でも子供のことが心配で、どうしてもあの子に会いたいと思って強く願ったんです。

すると、身体が浮かんで、青い大きなビルの方に飛んで行きました。そこで、ある部屋に入りました。玄関口にはたくさんの靴があり、中からは大勢の人の声が聞こえていました。

入り口にいた男の人に案内されて、一つのドアに通されのです。その部屋中には、別の男の人が椅子に座り、私の方を見ていました。

そして、私はその人に、子供に会いたいけど事故に遭って会えなくなりました。でもどうしても会いたいのです、と訴えました。

その人は、分かった、と一言だけ言いました。その人の顔はよくわからなかったけど、白く長い服を着ていて、長い髭を生やしていました。

その後、その人はこう言いました。

『あなたは、今まで懸命に働いてきました。悪い事をすることもなく、ただ子供を育てる為に働いてきました。子供に会いたいと強く願えば、その願いは叶えられます。

今からあなたは私の言う通りにしなさい。そしてただ正直に生き抜き、子供を育てることだけを考えなさい。平和に生きることだけを行いなさい』と。

それから部屋を出て、人々のいる広間に通されました。そこには、様々な悩みを抱えた人が、口々に願いを唱えていました。

病気が治ること、生活が楽になること、借金を返済できるようになること、事業が成功すること、仕事が見つかること、結婚して子供を育てることなど。

其々の悩みから、其々の願いを口にしていました。私もその中で、子供に会えるようにと祈りました。暫くして、カーテンで仕切られた向こう側に行くように言われました。

カーテンの向こうは暗くて何も見えませんでしたが、振り返らずに前へ歩くように言われ、そうしました。すると、突然、真昼のように明るい光が取り囲み、体がグルグルと廻った感じがして、ここへ来たのです。

ここで、私はロクサーヌと云う私と同じ名前の女性に会うと言われました。その女性に私の心が宿り、やがて、子供に会えると言われて来たのです。そして今。あなたに会いました。

今からは、私があなたの代わりにロクサーヌとして、ここで生てゆきます』

『kの回想』 12

 芦名が尋ねました。
「では、私はどうなるのでしょうか?」

「あなたは、何故ここに来たのですか?あなたもあの人に会って、ここに来るように言われたのですか?」

「いいえ、私はただ、助けを呼ぶ声に導かれて、ここに居るのです。気が付くと、この女性の身体になっていました。ここで、このロクサーヌという女性を安全な所に導いたのです。

 たぶん、あのザラフシャンの山の中で、この人は死んでいたのかも知れません。
私は夢中で、ただ生きる為に、山の中から逃げてきたのです。

 だから本当の処、何故自分がこの女性の心になっていたのかは分かりません。
あなたの言う人は、何という名前なのですか?」

「その人はマギと呼ばれていました。」

「そうですか、では私は、この女性を山の中から助けだした、ということですね。
きっとここで、あなたにこの女性を預けるのが私の役割だったのですね。」

「有難うございます。この女性に会えたことで、あの人の言うことを信じることができます。これから私は、この女性としてここで生きて、きっと私の子供に会うことができるでしょう。」

「子供の名前は何というのですか?」

「羽栗翔です。」

「かける、ですか。日本人なんですね。」

「ええ、私の夫は日本人でした。私たちは日本で暮らしていました。あの子はまだ小さい内に、父を亡くし、今は一人なんです。

 でもきっと、私があの子を見つけて育てて見せます。あの子もこの世界のどこかにいるはずですから。」

「では、私はここから去ることにします。きっと日本に帰れるのだと思います。お元気で、さようなら。」

「さようなら、無事に帰れることを祈っています。」

 自分は、その二人の話す様子を見ていたのですが、二人は自分がいることに気が付いていなかったようです。それから、目が覚めるといつものアパートでした。

 自分にはただの夢でしたけど、そこには芦名思魔と翔の母と、それから横たわっていたロクサーヌという女性がいました。

 マスターは話を聞き終えると確かめるように言った。
「それは不思議な夢ですね。そうすると、サラズムという町に、芦名思魔と翔の母親がいて、その二人がロクサーヌという女性の身体を交換したということですか。」

「ええ、でも二人は心だけで、ロクサーヌという女性は身体だけで心がなかったんです。」

「つまり、交換したのは『心』と言うことですか。マギというのは誰なんだろう。」

「その母親が 話していた、青く大きなビルの近くには高速道路が見えていました。そのビルのかなり上の方の階にマギのいた部屋がありました。」

 私は芦名の実家で見た封筒のことを思い出した。

「そう言えば、秋田の芦名の実家にあった、封筒の中には、1通は古代文字のような手紙と、もう1通は日本語で書かれた手紙だった。
そう、確か722年の世界にいる、ザラフシャン山脈の山の中にいる、と書かれていた。」

 マスターが説明した。

「722年は大勢のソグド人がザラフシャン山脈の山中で殺されるという事件が起きた年なんだ。そうすると、芦名思魔はその時代にいるということか。そして、翔の母親もそこにいるというのかな。

しかし、身体と心が別々になって、一つの身体に何人もの心が入れ替わるというのは?
多重人格のことなのか?

でも、手紙があるのは事実だし、翔も確かにいる。」

ルーム・ノヴァスの伝説 (その89)

「あなた方の神話とは、どう云う物なのですか。」

「私たちの神話は、ヒの神話なのです。ヒとは火であり日なのですが、それを中心として、12の天神が、この世の真実を守り、世界に豊穣をもたらし、人に豊かな暮らしと、子宝をもたらす、と云う物です。

十二神山があり、薬師如来様を祀っています。ただ、もう何百年も前なので、私にも本当のところは分かりませんが、古代文字で書かれた神話があったのです。それも、ヤマトの人々と交わるうちに、失われました。神話もいつの間にか変わっていったのです。」

「では、もうその古代文字の神話は今は読むことができないのですか?」

「ええ、今は失われた、と聞いています。」

「12神とはどのような方々なのですか?」

「それも、インドの神々だったり、仏教の仏様、あるいはヤマトの神話に出てくる神々だったりと、ハッキリしないのです。元の形が失われたのか、それともヤマトの神々と同じだったのか、それすらも分かりません。

ただ、12神とは山の神だという者もいます。12月12日を山の神の日として祀ることもあります。私たち日高見国でも12神を祀りますが、ヤマトでも熊野権現など12神将を祀ります。東と西で形は違っていますが、12神をまつる神社は日本中にあるのです。」

「そうですか、12神を祀るのですか。東も西も12神は同じでも少し違うと言うことなのですね。それは、私たちが探しているものと関係があるかも知れません。

私たちは、この世界を創ったと言われるものを探しているのです。あなた方から見れば、遠い過去であり、また遠い未来の話なのですが。ひょっとすると、その失われた古代文字の神話が、それなのかも知れません。それを探すには、どこへ行けばよいでしょうか?」

「ここから近いのは、12神山でしょうか。宇曽利山は北のはずれになります。ああ、十和田湖には青龍神社があります。またその手前ですが、西へ行くと12所天神がありました。そこが一番近いでしょう。古代文字があるかどうかは分かりませんが。」

「そうですか、では十和田湖へ行ってみましょう。」

私たちは,蝦夷の案内で、十和田湖へ向かう。

ルーム・ノヴァスの伝説 (その90)

十和田湖は、水が青く海のようである。岸辺は砂浜があり、波打ち際には、魚が泳ぎ、それを狙って、カモや雁などの水鳥が水に浮かぶ。一定間隔を置いて一羽ずつ浮かぶの姿はまるで釣り人の様でもある。

十和田湖の中山半島に、十和田青龍神社があった。ここの由来では、竜はもとは秋田のマタギだった男が竜となっていたのだが、熊野で修業したお坊さんとの戦いに負けて、追い出され、その後は勝利したお坊さんが竜となって住み着いているという。

青龍は、中国の伝説で東方の守護神で青い竜のことであるらしい。空海が唐で修業した際に、インド由来の川の神である善女竜王が、中国の青龍寺に飛来し守護神となっていた。空海が帰国する際に海が荒れその時に密教を守ることを誓い、助けてもらいった。その後、京都の醍醐寺に勧請し真言密教の守護神としたという。

日本各地の龍神伝説は、元は秋田のマタギの様に、地元に伝わる川の神の伝説だったのだろう。そこに、中国の伝説とインドの伝説が混じりあい、更にその混じりあった日本型の宗教伝説が、国家の宗教として、各地に広められた。その様なものが、『熊野で修業したお坊さん』であり、例えば地元の蝦夷の象徴が『秋田のマタギ』なのかもしれない。龍神の交代は、支配者の交代なのだろうか。

しかし、支配者が交代し、伝説の主人公が多少変わったとしても、相変わらず龍神信仰は続いている。龍神そのものは、日本にも中国、インド、中東、ヨーロッパと、ほぼ全世界に広がっている。日本では神様、中国では守護神。インドでは良い竜神と悪い龍神の2種類。中東やヨーロッパでは異教の悪魔である。

私達は、神社の周囲の森を巡る。そこには、日の神や風の神、天の岩戸、火の神などをあmつる洞窟も幾つかあった。私が、龍神に会いたいと強く願っていると、やがて龍神が現れた。

龍神にこれまでの経緯を話し、『創世記』を探していることを伝える。

「ロクサーヌ、あなた方が探しているのは、何のためですか?
その宇宙から来た人たちと戦うためですか?
もし、そうであるならば探しても無駄です。

『創世記』は、あなた方の為に書かれたものではないのです。『創世記』は、私達の為に書かれたものなのです。私達の歴史と神話なのです。ですから、それを知ったからと言って、あなた方の戦いに役に立つわけではありません。

まして、あなた方はそれを読んでも理解することは出来ないでしょう。」

ルーム・ノヴァスの伝説 (その91)

龍神は言う。
「その書物に書かれていることは、この宇宙を支配する数式なのです。宇宙の始まりから、銀河、恒星、惑星などの星々の世界で起きている事と、個々の惑星上で起きた生物や自動人形、機械のこと。それらがどの様に関連しているのかを解き明かす数式が描かれているのです。

宇宙で起きたことが、あなた方の日々の生活にも反映されるのです。また、あなた方が行った、行為が宇宙を通して,あなた方に帰ってくるその応答について書かれて居るのです。それは、数式と図形とからなる書物なのです。」

「それは、私達が読んでも理解できないのでしょうか?」

「理解できる人もいるでしょう。ですが、理解できない人が殆どでしょう。また、理解の薄い人はその書物の表面だけを取り上げ、悪用するでしょう。

ですから、その書物は隠されているのです。読む資格のある人にだけ、見出だされるでしょう。」

「今の私達には、その資格がないと言うことですね。」

「そうなのです。望みは、それを思えば直ぐ叶うわけではありません。その望みの高さにふさわしい努力が必要なのです。すぐに叶う望みなどは、本当の望みとは言えないのです。」

「ここに、惑星ルーム・ノヴァスから来たセルナと言う者がいます。彼は、かつてルーム人が地球に来たと言い、その子孫だというのです。

今、地球に彼の惑星の人々が近づいてきています。その人達は、この地球が自分たちの為の惑星だと思っているようなのです。その人達と、争いになるのかも知れないのです。」

「ルーム人は、確かにかつてこの地球に来ました。私達はこの地球に人類を残しましたが、その私達の残した人類とルーム人との戦いがありました。

ルーム人は、争うために来たわけではありませんが、しかし、平和に共存するのは難しいのです。ただ、戦う内に、お互いを知りそこから和睦の路、平和共存の道が生まれることもあります。」


「どうして、戦いになるのでしょうか?」

「理由は様々ですが、戦いを望む人、必要とする人がいるのは確かです。平和を望む人もいれば、戦いを求め、そこに喜びを見出す事があるのです。

勿論、経済的な理由から、戦争による利益を求める人もいます。

問題はその戦いをどの様に秩序づけるかです。今のあなた方に戦い自体を止めることは困難でしょう。無理に行うと、別の問題を引き起こす可能性もあります。

大掛かりな国家間の戦争が無くなって、暇をもてあます人は、暴力を求めています。暴力を見て喜ぶ人もいれば、実際にテロを起こそうとする人もいます。

原因は貧困であるとか、信条の違いであるとかだけではなく、心の奥にある死と暴力や破壊への興味、憧れなのです。

ルールを破りたい、破壊したいという原始的な欲望を、どのように制御できるのか。これは、誰もができることではないのです。」

ルーム・ノヴァスの伝説 (その87)

ジームラ・ウントの宇宙船団で。

「総理、使いの者は失敗しました。」

「何故だ、セルナが拒んだのか?」

「いいえ、あの星の者たちが、使いの者を疑ったのです。
彼らは、使いの者たちに反発したようです。そして、あの星にいた人々が、彼らの信仰ゆえに、疑い、敵だと見做したようです。」

「信仰ゆえに、疑うとはどういうことなのか。異なる信仰があるのは当然ではないのか?」

「彼らは、幾つかの信仰に別れて、其々が正義を主張し戦っているのです。」

「その様な事で、どうやって平和を伝えるのだ。」

「昔、ラガシュ王国は、メソポタミアで、隣国と200年戦いました。彼らは当時、和睦すると言うことを知らなかったのです。ラガシュ王国の王が初めて、平和条約を結びました。しかし、その後別の帝国に滅ぼされてしまいました。」

「では、彼らも平和条約を結ぶという事は知っているのだな。」

「はい、条約を結ぶことで争いを防ぐと云う事を学んではいるのですが、問題は狂信者なのです。彼らの中には、死を恐れずに信仰の為に、正義の為に戦おうとする者がいます。

理性的な判断よりも、名誉や誇りという感情を重んじるのです。」

「すると、彼らと共存する為には、その精神を変えねばならないという事か。」

「はい、その精神が問題なのです。文明の力をもってしても、死地へ向かう者を、抑えることは出来ません。その場合、全滅するまで戦いが終わらない可能性があります。

彼らの中に伝わる言葉があります。
『屈辱の中で死ぬならば、せめて何か有益なことをして死のう』

これは、ソグド人がアラブ人に攻撃され、人質となり奴隷となった若者たちが、アラブの将軍を襲い、その後に自殺した、その時の言葉と言われています。・・・」

「それでは、戦えば彼らの星を破壊することになるではないか。」

「地球を観察しましたところ、彼らは大陸の西から東まで、あらゆる所で戦いが蔓延しています。彼らは、戦うことに躊躇しません。それは、これからも変わらないでしょう。

このような星の住民と戦っても、我らは10万人しかおりませんので、戦いは永遠に続くでしょう。」

「うむ・・・。」

「ただ、やはり彼らの言葉で『死を望むものは愚かだ、栄光の中で死ぬよりも、悲運の中で生き長らえ方がましだ。』このような詩もあります。

彼らも、いつの日か平和を優先する日が来るかもしれません。」

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歴史的事実に改編を加えた妄想小説です。

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