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『kの回想』 23

学習院坂下の雑居ビルの一室で、芦名は事務所を開いていた。

心の悩みや、行方不明の捜索、借金の整理など、悩み事無料相談の事務所で、ホームページをネット上に公開していた。人助けの仕事がしたいと思ったのだ。

行方不明者はジェライルに頼むと、すぐに見つかった。評判になり、相談者がどんどん増えて行った。その中で、世界統一平和教に関連するものが増えてきた。

本人を見つけて、面会をしても、外見は本人なのだが、中身は全くの別人になってしまっているのだ。別の名前で、別の仕事をしていたり、別の暮らしをしていたり。本人は元にもどる意思もなく、解決できない事例が出てきた。

家族たちは、困って、被害者の会を結成するのだが、教団の悪意を証明することは出来ず、本人も戻る意思がないため、どうにもできなくなっていた。

教団の信者になっていた人々には、共通するものがあった。先祖を辿ると、帰化人が多かったのだ。彼らのほとんどが7世紀~9世紀に大陸から渡ってきていた。大陸の混乱を避けて日本に逃れて来ていたのだ。

その子孫は、多くは全くの日本人なのだが、中には先祖の記憶を失わないものがいて、彼らには、いつか大陸へ帰るという意志があった。教団の教えを受けるうちに強固になった者もいれば、教えによって覚醒したものもいた。

彼らの信条は4つだった。1つ、信仰を守る事。2つ、故郷を守る事。3つ、神、神使者に従う事。4つ、家族、同胞、友人を大切にする事だった。

彼らの故郷は、モンゴルなどの北アジアや中央アジアだった。現在では、中央アジアの東西トルキスタン、カザフスタン、アフガニスタンなどの幾つかの国家に分かれている地域である。その中心はアラル海であった。

彼らは、アラル海周辺を一つの国にまとめようとしていた。日本人である家族達は、元に戻るように説得をしたが、彼らの信条は強固で頑なに説得を拒んでいた。

アフガニスタンでアメリカが始めた戦争は、彼らには一つの機会と受け留められていた。
というのも、アフガニスタンはかつて、イギリスとロシアが争い、イギリスは撤退した。その後はソ連がロシアの跡を継いだが、結局崩壊した。

アメリカが始めた戦争は、過去の記憶からすれば、アメリカの撤退又は崩壊を招くものと思われたのだ。

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