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『kの回想』 32

「そうすると、私達が学んできた歴史はどうなるのですか。今までの歴史が変わると、現在もまた変わってしまうのではないですか。」

ジェライルは、当然の様に答えた。

「そうです。各時代の現在で、新しい歴史が生まれています。そして、やがて新しい歴史の事実が発見されたとして、知らされることになるのです。色々な国のメディアが隠された真実として、発見されたニュースを流すでしょう。

しかし、それはあなた方にとっては既に起こったことを歴史的事実として知らされるだけです。あなた方の個別の人生には変化はありません。過去に既に起こったことですから。」

「今起きているアジアでの変化はこれからどうなるのですか。」

「今の変化は、700年代に起きた変化に対応して、修正されつつある結果です。イリヤスが700年代の人々の意識を変化させ、彼らの望む世界を創りだしたとすれば、それは、彼らがその時代の人々の意識に訴え、それが支持されたからです。

その後の歴史の変化も全て、人々の意識の反映として歴史的な現在が形成されています。それは、例えばある人が一念発起して肉体の改造を行うためにトレーニングを積んだならば、やがて彼の肉体は全くの別人のようになってしまう、そのような変化が起きているのです。」

「では、今起きている変化は人々が望んだ結果なのですか。」

「そうです。歴史はいつも人々の望んだ結果でしかないのです。」

「でも、どうして2001年の現在を変えるのに、イリヤスはあの時代を選んだのでしょうか。」

ジェライルは、やはり当然だと言わんばかりに答えた。

「全ての時代は、同時に存在して居ます。すべての時空間は繋がっているのです。ある一点に変化を加えると、全ての時空間が影響を受けます。唯、その影響のエネルギーに大小があるだけです。

例えば、あなたがコップを落としたとします、その影響を受けるのはあなた自身と、あなたの周辺にいるごく少数の人だけです。しかし、ニューヨークで核爆発が起こるとすると、その影響は地球全体に及びます。

同じ様に700年代の唐はその時代の一つの中心であり、もう一つの中心はイスラムでした。その2つが出会う場所が中央アジア、トルキスタンでした。そこで起きた大きな変化は、その時代の全ての地域に影響を与える程大きなものです。

つまり、時空間を揺るがす大きな地点だという事です。その前の時代でも、その後の時代でもなく、彼らにとってはその時代こそが肝心な時代だったのです。」

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『kの回想』 33

「この変化を、戻すことは出来るのでしょうか。」

「歴史を変えることは可能です。この世界には、始まりもなければ、終わりもない。時空間は初めから存在し、過去にも未来にも存在して居ます。ただあなた方の意識がそれを変えるだけです。

あなたは何を変えたいと思っているのですか。その意識の強さ、意志の強さがすべてを決めます。」

「あなたが見た現在は、一つの姿に過ぎないのです。夢と同じです。あなたの意識は何処へでも行くことが出来るし、何をどのように変えるのかもあなたの自由なのです。

しかし、それには強い意志が必要で、何をどのように変えたいのか、それが問題なのです。あなたは、イリヤスを越える意志を持てますか、目的がありますか。」

「もう一つ聞きたいのですが、イリヤスはあなたから、啓示を受けたのですか。」

ジェライルは、少し目に力を入れて答えた。

「私は、イリヤスに会ったのかも知れないし、会ってないのかも知れません。
或は、私の祖先があったのかも知れません。私達は、宇宙を旅しています。私一人ではない、私の祖先もそうです。私達は、あなた方が、植物を育てる様に人類を育てているのです。新しく優秀な人類を生み出し、それがどの様な花を咲かせるのか。それを見て楽しんでいるのです。」


 高速道路の下の側道に沿って、地下鉄の駅を過ぎて、左手に歩くと、古びた喫茶店があった。貿易風という名の看板があり、木製のドアを開けると、薄暗い照明は少しオレンジがかっていた。

 入り口近くには大きな木のテーブルがあり、その周りを囲むように同じく木製の長椅子があった。奥まったところにはカウンターがあり、穴倉のようなその店の、壁際には、雑然と漫画や雑誌が積み重ねられていた。

 その頃、バイト先で知り合った友人とよく、オムライスを食べた。客はあまりなく、静かな店だった。就職できるのかどうかも分からず、勉強もあまりせず、バイトと遊びの日々を送っていた。白髪の少し混じった店主は、無愛想でいつもクラッシックの曲が流れていた。

壁にかかった絵を見て、私は尋ねた。

「これは、船の絵ですか。」

「ええ、そうです。宇宙船なんです。」

「宇宙船?」

「ええ、宇宙を旅するのが趣味なんです。」

店主は、そう言った。

                 ―――― 了 ――――
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歴史的事実に改編を加えた妄想小説です。

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