fc2ブログ

NEXT LIFE  銀座の画廊 3

 船から、音楽が聞こえ、いつの間にかドレスで着飾った人々がワルツを踊りだす。賑やかなそのダンスパーティーの様子に見とれていると、長い黒髪の女性が踊りませんか、と手を差し伸べてくる。踊りながらその人から漂う香しい匂いに心がざわつく。あなたも大王様と一緒に路を上るのですか、と問いかける。すると、その人は、私にはまだここに思いが残っています、という。大王様は何処へゆこうとしているのでしょうか。その人は黙って答えなかった。

 その人の匂いには覚えがあった。確かエレベーターですれ違った人の匂い、だと思った。長い黒髪が突然私を包み込んだ。匂いにくるまれているうちに、私にその人の記憶が伝わってきた。

 ダンスを踊っている人々は、いつの間にか泥でできた人形になっていた。鮮やかに彩色されて、まるで生きているように見えるのだが、音楽がやむと同時にみんな動かなくなってしまった。

 大王とその一行は、まだ路の途中だった。空には黄色くにじんだ月と、赤い星が見えた。船は誰もいなくなって、静まり返っていた。夜の暗闇の中で、私とその人だけがまだ生きていた。

 この船に乗るのですか、と私は尋ねた。いいえ、まだ乗れないのです、とその人が答えた。
まだ一日ありますね、少し散歩でもしましょうか、と二人で川岸を歩いた。

空はいつの間にか明るくなり、船の姿も見えなくなり、気が付けば晴海ふ頭の公園を歩いていた。

スポンサーサイト



プロフィール

gasset

Author:gasset
FC2ブログへようこそ!
歴史的事実に改編を加えた妄想小説です。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
01 | 2020/02 | 03
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR