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NEXT LIFE  銀座の画廊 9

 刑事が帰った後、まだお昼を食べていなかったことを思い出し、弁当でも買おうと思って歩き出した。いつもは、曲家亭という餃子屋の弁当を買うのだが、もう時間が遅いので売切れているだろうと思いコンビニへ向かう。

 突然、台風かと思う程の突風が吹いてきた。足腰の衰えからか前進することもままならず、その場で立ち止まるのが精一杯だった。ところが周りの人はいつも通りに歩いている。まるで私一人向かい風に立ち向かっているのか。これでは、コンビニまで歩くのも危険だと思い、目の前の角に見えた亞里庵という店に何とか飛び込む。

 初めて入る店だが落ち着いた雰囲気で何か高級そうにも思える。しかし、メニューを見ると餃子とチャーハンがあるのでとりあえずそれを頼んでほっとする。

 壁には、大きな額がかけられているが、馬の胸像のような絵で、緑色のたてがみにはバラの花束がかけられ、流れるように花が零れ落ちている。中華料理には似つかわしくない絵だと思いながら、その馬の何か優しく悲しげな黒い瞳が心に残る。

 ふと、目の前にまた少女が座っている。
「エリザちゃん、どうしたの?」と聞くと、
「おじちゃん、探している人は見つかった?」と聞く。
「探している人って、誰の事?」
「香ちゃん」と言う。
「それは誰?」
「探してたでしょう?さっき警察署で」
「えっ、もしかして畔倉 香?」
「そうだよ、私知ってるよ」
「どうして知ってるの?」
「前に波止場で見たことあるよ」
「いつ頃?」
「わかんない、でももう随分前だよ。
波止場に来たけど船には乗らずに帰っちゃったよ」

「エリザちゃんは、どうして波止場にいたの。」
「お母さんを待っていたの」
「どうして?」
「お母さんが、帰ってくるまで待ってて、て言ったから」
「お母さんは、帰ってきたの?」
「まだ帰ってこない」
「待ってなくていいの?」

「もう待ちくたびれちゃったから、もういいの」

「でも、一人だと心配だね、お家に帰らなくて大丈夫なの?」

「今はね、麗珠おばちゃんが遊んでくれるからいいの。
おじちゃんは心配しなくもいいよ。大丈夫だから」

餃子とチャーハンが運ばれてきて、食べているうちにエリザちゃんは消えてしまった。


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