fc2ブログ

NEXT LIFE  この世界の秩序 3

 凛は、小柄で髪はおかっぱの、一見すると事務員風で、ここにはまだ似つかわしくないが、見方によっては、素人風の初々しさがあるとも言える。
 
「凛です、宜しくお願いします。」と言って、私と鈴木の間に座った。

 水割りを作る仕草もまだぎこちないのだが、真面目さは伝わってくる。

 鈴木が、あれこれと話しかけるのだが、肝心な事、例えば山中響子という名前や、波多野の事、などはまだ話していない。

 そうこうしているうちに、照明が落とされ、ダンスフロアでショータイムが始まった。東南アジア系と思われる、女の子たちが激しく腰を振って踊っている。
回転するミラーボールに照らされ、時おり、暗闇の中に凛の顔が輝いて見える。

 ウイスキーの酔いもあるせいか、点滅する光の中でフラッシュバックのように、凛の顔が、見覚えのある人に見えてくる。凛の瞳は青みを帯びており、その髪の色は光に反射して、明るい茶色や金色に見えた。

 ショータイムが終わり、チークタイムが始まる。鈴木と渚ちゃんが席を立って踊りだす。

 2人きりになり、少しの沈黙のあとで、凛の顔を改めて見る。不意に強い確信が生まれた。この子はエリザだ。

「ここに来たのはいつ?」

「ここって、この店ですか?」

「いや、この世界。」

「この世界って、いつ生まれたか、ということですか?」

「いや、僕は君の味方だよ。君は、この世界では山中響子。でも、僕と逢っているはずだ。あの銀座の画廊で。思い出せないのか?」

「何を言っているのですか?」

「君の名前は、向こう側ではエリザちゃんだった。いつ、こちら側に来たのか聞いている。僕は、ここではkと呼ばれているけど、清原だ。おじちゃんだよ。」

「・・・。2、3か月前よ。」

「やっぱり、エリザだね。でも、何故。君が山中響子なのだ?」

「私も分からないの。でも、気が付いたら山中響子だった。あの時、波止場から3人一緒に船に乗ったはずなのに。」

「2、3か月前というと、波多野はまだいたのか?」

「ううん、私が気が付いた時には、会社もなく無職だった。でも、月成が連絡してきて、ここを紹介してくれた。」

「月成は、どこに連絡してきたんだ?」

「山中の実家よ。会社が無くなって、困っているのじゃないかって、心配している口ぶりだった。」

「月成は、まだ連絡してくるのか?」

「この店に時々来るだけ。」

「君は、今はどこに住んでいるの?」

「今は、山中の実家だけど、父がすごく不機嫌で、居づらいのよ。もうすぐアパートを借りるつもり。」

「今日はもう帰るけど、これが、僕の連絡先だ。でも名前はkだ。清原の名前は、誰にも言わないで欲しい。また、来るよ。」

「わかった。誰にも言わないようにする。」

その日は、酔いも回ったせいか、それで帰った。
スポンサーサイト



プロフィール

gasset

Author:gasset
FC2ブログへようこそ!
歴史的事実に改編を加えた妄想小説です。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
03 | 2020/04 | 05
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR