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NEXT LIFE  この世界の秩序 4

 月成は、福岡の出身で先祖は士族だった。明治維新以後、士族の不満は特に九州で強く、佐賀、熊本、福岡、山口、鹿児島で反乱が起きている。月成の先祖も、反乱に加担した一族であり、西南戦争以後は、アジア主義を唱えて右翼的な活動を行っていた。

 第二次世界大戦後は、革命をもくろむようになる。戦後の左翼の運動の中で、月成の立場はわかりにくい。ある時は、左翼革命であり、ある時は維新革命である。だが、それを貫くものは、反欧米であり、攘夷であったのかも知れない。

 月成は、左翼の革命運動を通じて、先鋭化し、やがて爆弾テロを実行するのだが、それは幕末における勤王の志士達の暗殺テロや、あるいは特攻隊の自爆攻撃に自らを重ねていたのである。

 実際、圧倒的な秩序を前に個人が取る対抗手段はテロとならざるを得ない面がある。ゴリラのような機動隊に対しひ弱な左翼学生は蹴散らされる運命にあった。

 そのようにして、爆弾テロの道に進んだものの、戦略的な行き詰まりは明らかだった。後は、自衛隊への突入と決起を促す檄文くらいしか思いつかなった。それでは、右翼と何ら変わりはない。

 その時に出会ったのが、『神州光輪会』の花澤行雄だった。花澤も元は左翼の革命家だった。しかし、花澤は、宗教家に転じていた。花澤がなぜ宗教を選んだのか、もちろん本当のところは聞いても答えるはずもない。だが、ある時月成は花澤にそのことを尋ねてみた。

 花澤は、『欧米と対峙するには宗教が必要なのですよ。イスラームとキリスト教の対立を見てみなさい。人種や民族やまして国家ではない、宗教が人を繋ぎ、また人を別けているのです。インドから、日本まで、仏教またはヒンズー教があります。

 これらを統合する宗教があれば東アジアとしてまとまることができるのです。インドと中国を結ぶのは大変かもしれません。その前に、日本と朝鮮を一つに結ぶことができるかどうか。ですがそれができれば、きっとアジアはまとまりますよ。』と、言ってその為に働くのだといっていた。

 今は、月成はその花澤を信じている。その為に働いている。
この赤坂のクラブ睦は、その花澤が政財界、さらには宗教界という日本の支配階層とつながるための一つの舞台だった。やがては、政界を動かそうという野望があるのだ。

 だが、その月成にも、どうにも分からないのは、山名響子を花澤が手元に置こうとしていることだった。花澤の指示で、山名響子をこのクラブのホステスとして働かせている。波多野を追い出しておきながら、山名響子を手元に置くというのは、どういうことなのか。

 まるで、そうする為に波多野を追い出したようにも見える。勿論、波多野の事業の失敗が原因ではあるのだが。それは、あくまで表面上のこと、河野が波多野を消すように山川に指示したのも、本当は花澤の指示だったのではないか。

実際、河野は今も本部長として残っている。消えたのは、波多野と波多野を消した山川だ。

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