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NEXT LIFE  波多野の運命 2

 川南は、すぐに男の後を追い、部屋を出た。男は丁度2階からおりる階段の手前にいた。引き止めようと、男の肩に手をかけると、男が振り返り、川南の手を振り払った。川南は、勢い余って、足を滑らせ、狭い通路で男を突き飛ばす形になってしまった。男は、階段を転げ落ち、川南も慌てて、階段を駆け下りた。下の地面は既にぬかるんでおり、男は泥まみれになった。

立ち上がった男の目が怒りに燃えて川南をにらみつけていた。

何かを叫びながら、男が川南に掴みかかったが、すでに川南には何も聞こえなかった。男に殴りつけられ、倒れるときに、道具置き場の前に立てかけてあったスコップが目に入った。川南は、立ち上がると、すぐさまスコップを手にした。川南には、もう何も考える力は残っていなかった。唯、無我夢中で、男に向かってスコップを突き立てた。


どのくらいの時間がたったのか、まだ雨の音がザーザーと聞こえていた。
汗びっしょりになり、悪無から目が覚めた。

夢の中で、川南は、誰かに殺されかけていた。必死に反撃し、男を打ち据えると、男はやがて静かに動かなくなった。それから、川南は穴を掘り、男を埋めた。
――――― ああ、あれは夢だったのか。そう思って、ほっとした。

だが、起きてみると、川南の手は、泥だらけだった。服もずぶ濡れで、泥まみれになっていた。

翌朝、朝の点呼の時間になっても、男が一人起きてこなかった。

「山田の野郎、どうしたんだ。夕べっから姿が見えねえけど。誰か知らねえか?」

監督がそう言って探したのだが、誰も知らなかった。

川南は、あれは夢ではなかったのだ、と悟り、内心穏やかではいられなかった。

何処に、死体を埋めたのか、その辺りの記憶はない。しかし、両の手には男をスコップで打ち据えた感触が残っていた。
 
確かに、俺が殺したのだ、そう思うと、だんだんと実感が湧いてきて、震えが止まらなくなった。

いつかバレルに決まっている、今日か、明日か。
逃げるのなら、すぐに逃げないと。しかし、逃げたら、俺が何かやらかしたと怪しまれる。死体が見つかりでもすれば、間違いなく俺が疑われる。

一日、一日と日が経ち、男が殺されたのか、或は事故にあってどこかで死んでいるのではないか、などと皆が噂している。

だが、幸いなことに、警察に届けられることは無かった。ここで働いている者は皆、世間から逃げてここにいるからだ。戻る場所もなければ、探す者もいない。もし探す者がいるとすれば、それは恨みを持つ者だけだった。

だとすれば、ここから逃げ出して外の世界に行ってしまえば、そこではもうここで起きたことを責められることは無い。

そうだ、やっぱりここを逃げ出そう。川南はそう決心した。

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