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NEXT LIFE 神州光輪会 9

 師岡は、しつこく、神州光輪会を見張った。田倉は、その事に気づいたが、もう花澤には報告しなかった。報告したところで、月成の処分には繋がらないと分かったからだ。

田倉は、直接師岡と話した。

「師岡さん、あなたが追っているのは、月成ですよね。ここに来るのはその為だと仰っていましたよね。」

「ええ、佐久間良治と最後にあったのが月成さんだったと聞いています。なので、月成さんから佐久間の行方を聞きたいのです。」

「でしたら、月成の居場所を教えますので、その代わりもうここへは来ないようにして頂けますか?」

「佐久間良治の行方さえわかれば、ここへ来ることは有りませんので。」

「では、ここに行ってください。」

 六本木にある古い木造アパートの住所だった。短い坂道の奥まったところにある駐車場に隣接した建物だった。多分、流行りの地上げでその内アパートごとなくなるのだろうと思われた。

「こんな所で生活しているのか。」アパートの2階にある月成の部屋は、隣接するアパートの壁に窓が面していて昼間も薄暗く、日も差さない状態だった。

 ドアをノックするが返事はなかった。ドアの前は良く掃除されていて、ゴミなどはなかった。
周囲を確認するが不審な物もない。改めて夜出直すことにした。

 アパートから察する限り、月成の暮らしぶりは何も余計なものの無い質素なものだった。恐らく幕末維新期のテロリストたちのような、唯、革命だけを目指し、何の楽しみも求めないストイックな生活なのだろう。

 師岡は、実際のテロリストに会ったことは無い。普通の犯罪者ならば、どこかに生活の匂いがあるし、むしろ、一般人よりもだらしない生活ぶりの方が多い。普通に生活することが出来ずに犯罪に走る,自分の欲望を優先してしまい我慢が出来ないのである。

 だが、テロリストは逆だ。革命なり、テロルなりの目標を定めると、それに集中し他の事は目に入らない。そして、暮らしぶりには生活感がなく、無駄を嫌うイメージである。

 犯罪者は多かれ少なかれ、人格が破綻しているものだが、テロリストは独特である。革命家というものが孤独であり、饒舌な政治家とは違うようにである。目標を定めた時点で、その事の是非は問われないのである。それだけに、目標を定めるまでは慎重であり、証拠は残さず、人付き合いもほとんどない。

 夜になって、再びアパートを訪ねた。明かりがついているので、多分いるのだろう。
ドアをノックする。返事はないが、此方を確かめている気配はある。

月成さん、と呼んでみる。誰だ?と短い返事があった。

「佐久間さんの件で聞きたいことがあります。渋谷署の師岡です、開けてもらえますか?」

ドアを開けて、月成が出て来た。

「これから、ちょっと出かけるところがあるので、それを済ませてからでもいいですか?」

月成はそう言うと、後ろ手にドアを閉めた。
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