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NEXT LIFE 神州光輪会 10

 空は、鈍い鉛色だった。所々、黒い雨雲が低く垂れ込みその下は灰色のカーテンが地上に降りていく様に見えた。月成は窓に立てかけてあった雨傘を持って歩いた。

 何処へ出かけるのか分からなかったが、ここで見失えばもう会えないような気もした。一瞬、いやな予感もしたが、師岡は月成の後を追った。

薄いあずき色のビルの地下へと続くコンクリートの薄汚れた階段を降りると、Rinという名のスナックの入り口があった。中に入ると、5、6人の男達がいたが、妙に静かだった。

月成がマスターに小声で何かを告げると、水割りが出された。客は、月成の知り合いのようで、軽く会釈を交わしていた。師岡もウーロン茶を頼んだ。

客の一人が師岡に話しかけてきた。

「あなたは、現在の我が国の状況をどう思っていますか?」

「何の話ですか?」

「戦後の日本で、人民は配給物資もままならない中、必死の思いでこの国の未来の為に働いてきた。それは、戦争で護国の礎となって死んだ者たちの遺志を引き継ぎ、せめてもの報いという気持ちがあったからだ。

 だが、今はどうだ、政治家は金の為に平気で民心を裏切り、恫喝し、挙句土地家屋を奪っている。しかも、その裏にいるのは戦前には、国家の為と言われていた右翼の大物たちや、大企業、大宗教教団の会長達だ。それらを見て、あなたは何ともないのですか?」

唐突に議論を吹っ掛けられた。

「私は、勿論不正があれば、法を守る立場ですから、法に則って戦います。」

「具体的には、どう行動するのですか?」

「市民生活の平和を守るという事です。」

「それならば、彼らを見逃すのですか?それとも、彼らに対し天誅を下す者たちを助けますか?」

「私の立場で、天誅は認められませんよ。何よりも、法を守るのが第一です。」

「では、彼らの脱法行為は誰が裁くのでしょうか。」

「それは、法に従って裁かれるのです。」

「誰が、彼らの違法を取り締まりますか?あなたは出来ますか?」

「被害の訴えと、証拠があれば、取り締まりは可能です。」

「現に被害に遭っているのは、無力な人民でしょう。その者たちが、どうやって訴えますか、証拠もなしに騒ぐだけの者を、国家は守りますか?出来ませんよね。

結局、無力な人民は、国家から見放されるだけですよね。生活の為に必死に働くものが、巨悪の訴えの為に証拠を探すことは出来ませんよね。その様な者が、自らの力で訴えて、自力で対決しようとしたら、警察は、まずその者を暴力行為で逮捕するでしょう。

そして、事の真相は調べずに、表面に現れた現象のみを理由に暴力犯として処罰する、それで終わりですよね。」

――――――  延々と続く男の話を聞かされていたのだが、妙なことに、この無意味なやり取りは以前も経験した事がある、そんな気がしていた。

そうだ、この後、この男との話が決裂した。そして、男たちが私を取り囲んだ。
その光景が思い出された。
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