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NEXT LIFE  変革の時 13

 鈴木は、今までの経緯を改めて、石井刑事に報告した。

「そうすると、田口刑事の考えでは、神州光輪会の月成が原発事故に関係していると見ているわけですね。」

「そうです。月成は元々、左翼の人間でかつては爆弾テロでも容疑がかけられました。今回も、何かテロ事件を企んでいる可能性があります。」

「税関では、何も無かったことになっています。ですが、同じ時期に原発事故があり、それに月成が絡んでいたとするならば、密輸というのは、原発に関係する物、つまり核爆弾の製造に関わる物という事ですね。」

「はい、それが何かは分かりませんが、恐らく核爆弾の製造に必要なものを北の共和国に持っていこうとしたのかも知れません。」

「ふーむ、でもそれにしては、あっさりと引き下がってますね。税関で見つかったのか、それともそんな噂が敢えて出る様に仕組まれたのか。」

「見つかるように最初から仕組んでいたというのですか?」

「もし、そうだとすれば、目的は今回の密輸事件そのものではない。何かは分かりませんが、当面監視する必要がありますね。公安には私から報告しておきます。田口刑事は、波多野の方を再度当たってみてください。」

―――――― 月成が本気で何かを企むとすると、それは何だ。核爆弾まで持ち出す可能性を見せているわけだ。それは、単なるテロ事件ではなくなるかも知れない。本気でクーデターを計画しているのか?

NEXT LIFE  変革の時 14

 田倉は、月成の動きを察知し、遠藤に会うため、山梨へ行った。

「月成が、神州国民同盟という政党を作っています。国政選挙に立候補するつもりでいるようです。」

「政治ですか。でも、立候補を辞めさせることは出来ないでしょう。」

「しかし、そのメンバーは恐らくこの甲州建設から引き抜くのではないですか?」

「どの位いるのですか?」

「多分10人くらいだと思います。私の方で、月成を監視させているのですが、六本木辺りで頻繁に集まっているようです。」

「ここから、10人も出たら、教団との関係を隠すことは出来ませんね。」

「月成は、もうその関係を公にするつもりなのでしょう。」

「そんな事をしたら、教団の資金源についても税務当局から調べが入るのではないですか?」

「そうです。月成は、教団のすべてを巻き込むつもりなのでしょう。」

「どういう事ですか?そんな事をして、選挙に打って出ても、教団が潰されたら意味がないじゃないですか?」

「それが、狙い、と言っては言いすぎですが、教団を表に出すことで、議員たちに、教団との関係を公にすると、脅しをかけるのじゃないですか。教団と関係のある議員たちに、今の政党から、神州国民同盟への移籍を迫るつもりでしょう。そうすれば、教団がつぶれることは無い、税務調査も骨抜きで終わるでしょうから。」

「つまり、関係のある議員たちに踏み絵を踏ませるというのですか?」

「そうです。教団が政治に関わることで、今まで教団から援助を受けていた議員たちを、教団側の政党に移し、政権を奪取するつもりでしょう。もし、それに反対すれば、議員自身が国税や検察の調査を受ける事になります。」

「それは、一種のクーデターですか?」

「それこそが、月成の目的でしょう。」

「でも、そうした所で、彼には、国政を担う具体的な計画でもあるのですか?」

「分からないのは、そこです。クーデターを考えたところで、その先にどんな国を作るのか、その方針がなければ、国は混乱するだけです。」

「その先の国家計画が無ければ、いくら議員たちでも、ついてはいかないでしょう。失敗しますね。」

「ええ、その場合、結局教団だけが傷を受けることも考えられるのです。」

「どう考えても、月成は危険な方向へ向かっていますね。」

「そうです、私は今こそ月成を排除するべき時だと思っているのですが。そこで、遠藤さんに協力をお願いしたいのです。」

NEXT LIFE  変革の時 15

 遠藤は、何かを思い出したように、田倉に話し始めた。

 「田倉さん、昔、同じことがありましたね。覚えていますか?」

 「同じ事というのは?」

「月成のクーデターですよ。その時も、私達は、彼を止めようとしました。ですが、彼は抵抗し、その結果、山名響子が死ぬことになりました。そうではありませんでしたか?」

「そうでしたね。そう、あの時には、月成の計画を事前に阻止しようとして、Rinへ乗り込んだのでしたね。」

「ところが、そこに何故か山名響子がいた。」

「そうです。山名響子も女性候補として、立候補させようとしていたんです。そして、山名響子はセミナーの講師をしていたので、その会員たちも、集めていた。」

「私達が、Rinへ行くと、彼らの支持者が、店の周りに集まっていた。」

「そうだ、彼らは、選挙に立候補すると言いながら、武器を用意していた。実際に武装クーデターを準備していたのです。」

「結局、私達の配下の者と、その支持者たちが揉み合いになり、そのはずみで、誰かが銃を撃ち、それが山名響子に当たってしまった。」

「あの時、彼らの本当の狙いは選挙運動と見せかけて政治集会を開き、集まった群衆をそのまま引き連れ、官邸に突入する予定だった。そして、それとは別に幾つかの部隊を用意し、放送局や、自衛隊本部を占拠する予定だった。その為の武器と、人員が密貿易を通じて、半島から用意されていた。」

「そうです。室田の食品貿易などと言うのは見せかけで、実際には北の共和国から、武器が四谷食品に送られていた。そして、蜂起の為の人員が、南の韓国から山川の下に技術者として送られていた。」

「これを防ぐのは、我々だけで出来るのでしょうか?」

「我々だけでは、また同じ結果になるのかも知れません。けれど、我々は過去の経験を思い出している。事態は違った方向に向かうはずです。」

「例えば、どのような方向でしょうか。」

「鈴木というジャーナリストです。彼は、最後に佐久間良治の事を尋ねていました。」

「佐久間良治の事をですか?どうしてでしょうか。」

「理由は分かりませんが、唯、佐久間良治の事も月成の犯した罪の一つです。それが、暴かれれば、そこから月成が逮捕されることも考えられます。」

「その為には、佐久間良治がここに居る事を知らせなければなりませんね。」

「ええ、そうです。これこそが、月成を抑えるための武器となるのかも知れません。」

NEXT LIFE  変革の時 16

 台東区のコリア貴金属協会の山川の処に、月成から連絡が来ていた。国会図書館前に集合し、総理官邸前までのデモ行進についての案内だった。

今までと同じ、政治集会への参加要請の様に見えるパンフレットだったが、リーダーは10名で各部隊に別れる、となっていた。参加人員も、200名となっていた。今までにない規模である。早急に半島から人員を集める必要があった。

――― 今までとは違うな、200名も用意するのは簡単ではない。半島からの人員では間に合わない。在日にも応援を頼むか。しかし、在日だと、その後の生活にも影響するから、政治的な事には関わらないものが多いのだが。

半島から、ツアー旅行者を募って、デモに参加させるか。アルバイト代を出せば、来るだろう。ついでに観光もできるのだから、損な話ではないはずだ。

 その程度の話だと思っていたが、月成の部下だという男から電話が入った。

「甲州建設の橋詰と言います。月成取締役からの指示です。来月予定の集会のパンフレットはご覧になりましたか?」

「ああ、今見たところだよ。でも、200人はずいぶん多いな。何かあるのか?」

「これは、蹶起です。デモ隊は、そのまま総理官邸へ向かい、突入する予定です。ですので、メンバーはそれなりに動ける方を選んでください。」

「蹶起だって?そんな話は聞いてないよ。選挙に立候補するだけじゃないのか?」

「その日には、甲州建設からも50名ほど向かいます。そのほかに神州光輪会のセミナーから100名参加予定です。そして、今までの遊説演説などの活動からの、参加見込みが約50名。総勢400名になります。」

「そんな事をやって成功の見込みはあるのか? 失敗した場合にはどうするつもりだ?」

「取締役は、必ず成功すると言われています。」

「いや、成功って、何をどうするつもりなんだ? 成功した場合にはどうなるというんだ。」

「それは、取締役が考えています。我々からは何も言うことはありません。とにかく、山川さんは200名の人員を揃えてください。必ずです。」

――― 何だ、この一方的な話は? まずいな、半島からの人間で良いのか? 誰に相談するか?

 月成は、元々、テロリストだ。そんな奴の考えは、相手を殺すことが成功で、その後の事は何も考えていないに違いない。下手したら、単に騒ぎを起こして、自決して、それで終わりってこともある。

過去のテロリストは殆どそうだ。兎に角、死ぬことしか頭にないんだ。そんな奴の指示に従ってこっちまで、自決しろ、なんて言われた日には目も当てられない。

NEXT LIFE  変革の時 17

 甲州建設の橋詰と言っていたな。遠藤社長に相談するか。波多野を甲州建設に送って以来だな。

「遠藤社長ですか、ご無沙汰してます。10年前、波多野の件でお世話になりました、山川です。」

「山川さん、波多野というと、あの金慶国ですか。」

「はい、あの時はご迷惑をおかけしました。」

「いや、あの後、山本先生が来られて、波多野を引き取ってゆかれたので。こちらには何も迷惑などはありませんでしたから、気にしないで下さい。で、今日はどうされましたか。」

「実は、そちらの橋詰さんから連絡がありまして、月成さんの計画されている件についてなのですが。」

「なんですか、それは? 橋詰がどんなことを連絡しているんですか?」

「月成さんの計画に、そちらから50名参加するので、私の方でも200名用意しろと言われたのですが、ちょっと厳しいかな、と思いまして、ご相談なのですが。」

――― 月成の計画?50名参加する?俺には相談がないな。この前、田倉が言っていたクーデターの件か?

「その話は、例の国政選挙に立候補する事についてですか?」

「はい、その政治集会に参加するメンバーを用意する、という話です。」

「そうですか、その件でしたら電話では、話しにくいこともありますので、会って話せますか?」

「分かりました、ではそちらに伺いましょうか?」

「いや、私の方で東京へ行きますので。その時にお会いしましょう。」

――― 田倉にも会って、相談した方がいいな。

赤坂の睦で、遠藤と山川、田倉で話し合いがもたれ、山川は橋詰の連絡の内容を2人に伝えた。

「では、来月に蹶起すると、橋詰は言っていたのですね。」

「そうです、遠藤社長。でも、実際の処、私の方で200名用意するのも難しいし、まして官邸に突入と言っても、どんな計画なのかも説明がないのです。」

「田倉さん、この件は、花澤先生はご承知なのですか?」

「それが、良く分からないのです。花澤先生自身がかつて、クーデターに関わった経歴があります。そして、月成の動きを知らないはずは無いのですが、一向に御咎めなしなのです。」

「では、花澤先生も暗黙の了解を与えている、という事ですか。」
遠藤は落胆した様子で、つぶやいた。

NEXT LIFE  変革の時 18

――― 山川は、3人で話し合う内に、ふと山本先生の話を思い出した。波多野が、山奥で道に迷った時に山本先生に出会った、という話である。

「お話し中すみませんが、ここで私達が、このような話し合いをするのは、初めてですか?」

「どういう意味ですか?」遠藤も田倉も、山川の質問の意味を図りかねた。

「いえ、私も、気が付いたのですが、此方の世界で出会う人に、2種類あるのですよ。一つは、自分とは関りの無い人たち、出会ったところで、唯通り過ぎてしまうだけの人達です。縁のない人ですね。

 もう一つは、出会うことによって、その後の運命が変わってしまう人達、縁のある人です。勿論、その縁も、その先変わってしまいますので、途中で、縁が切れることもありますし、また縁が復活することもありますが。

で、ここで話している自分たちの姿が、ぼんやりと見えまして、そうすると、それはかつての世界ではなかった姿だと気が付いたのです。

私達3人がここで出会うのは、どうしてなのかな、と気になってしまいまして。それで思い出したのは、波多野が、10年前に山の中で山本先生と出会って、助けられた、と言っていました。

それから、あいつは私の誘いを断って、地道にまともな人生を送ろうとしているようなのですが。それも、よく考えたら、前の世界のあいつとは違うのですよ。

何故だか、分かりませんが、人の人生は、出会いで変わるのかな、という気がしました。」

遠藤が、うなづいて話した。

「それは、私達が、ここで話し合う事で、月成の起こす計画を変えることが出来るという事ですね。」

「そうです、以前は、月成の計画を止めることは出来ませんでしたが、今度は違う結果になる様な気がします。

そして、これは、一度山本先生に会って詳しくお聞きしたいのですが、妙に感じることがあるのです。」

「どんなことですか?」

「私は、この世界で、今まで生きてきて、自分という物をよく見てこなかった、考えてこなかったのです。というよりも、殆どの事が、自動的に進むので、何も考える必要がなかったのです。

そういうと、言い過ぎかもしれませんが、兎に角、何も考えずに、注意を払う事もなくとも、まるで自動運転の車にでも乗っているかのように、人生が過ぎてゆくのです。皆さんは、どうですか?」

山川が、そう問いかけると、遠藤も田倉もうなづいた。

「そう言われれば、自分について深く意識することもなく、言ってみれば目を瞑ったままでも生きてこれたような気がします。勿論、悩んだこともありますよ。若い頃はね、だからこそ、花澤先生に従っているわけですから。

 でも、本当の処はどうなのか?言われたことを、無条件で受け入れて、それが信じることだ、なんて思ってやり過ごしていたのかも知れません。

目を瞑って生きたからと言って、それが楽な人生だった、幸福だった、というわけではありません。つまり、本当の自分を見ないようにしていた、避けていた、という事です。」

田倉が、過去を振り返って、そう話した。

NEXT LIFE  変革の時 19

 山川が、更に自分の思いを話した。

「それで、改めて、気が付いたのは、何も考えずとも、人生は通り過ぎる、それは先程話した、関りの無い人々の事ですが、肝心の自分自身をそうやって、関りの無いものとして無関心でいたのです。

勿論、私は半島北部の出身で、戦時中に日本に来ましたので、それなりに、苦労はしています。経済的にも、或は民族的なこともありますし、まして、祖国が南北に別れて戦ったりしましたから、学生の時にも、在日同士で南と北に分かれていがみ合う。同じ祖国を持ちながら、そんな風に争ってきました。

日本人なのか、半島人なのかその事でも悩みましたし、仕事でも、堅気の仕事ではないこともありました。そんな事を考えれば、目を瞑って生きてはこれ無かったはずですが、でも実際は、自分自身について、目を開けてしっかり見ていた、考えていた事は無かったのです。その日を、その人生を、やり過ごす、生き延びる、唯それだけでした。

でも、改めて今回の事で、真剣に話し合ってみると、自分がどうしたいのか、どうすべきなのか、それが自分の姿が少し、見えてきました。大事なのは、やはり自分に対してもっと真剣に関心を持つことなのかな、とそんな気がしたのです。上手く説明できなくて済みません。」 

――― 山川は、波多野の事を思いながら、自分も、出来れば平和に生きたいのだ、と思っていた。変ることが出来るとすれば、今しかない、とも思えた。

遠藤が、話し始めた。

「実は、私も、不思議な気がしているのです。この人生は、もう何度も繰り返してきました。ですから、そういう意味では、ゲームの仕組みも分かるし、先に起こる事も大体読めて来ましたから、目を瞑ってでも生きられる、という気持ちも分かります。

ところが、肝心なことは、何も変わらない。変えられないのです。次の人生では、あんな失敗はしたくない、などと思いながらも、同じような失敗を繰り返すのです。それで、自分は何の為に何度も繰り返し生きているのか?人生の過ちを正す為ではないのか?などと、思ってみたりするのです。

この様な疑問を、持っているので、それを山本先生に尋ねてみたいと思っているのです。」

NEXT LIFE  変革の時 20

 田倉も、思いを話し始めた。

「私は、その事を、何故繰り返し生きるのか、を花澤先生に尋ねてみました。すると、先生は、人生の過ちを正す為だと仰いました。そして、『人生には目的があるのだ』と言われました。『その目的は、しかし今はまだ明かされない、いずれ時が来ると知らされる』と言われました。

 今もまだ、私には目的が何なのか分かりません。しかし、過ちを正す為というのも目的の一つではないか、と思っています。 私にとって、かつて月成の行動を抑えられずに、山名響子を死なせたことは、過ちだったと思っています。それを、正したいと思います。

・・・その一つに、実は山名響子が慕っていた、佐久間良治という者の件があります。12年前の事なので、今更、とは思いますが、あれは月成によって、拉致された、ともいえるのです。」

「その件ですが」遠藤が、少し心配そうに話した。「佐久間良治は、甲州建設で働いているのですが、それを探している鈴木というジャーナリストがいます。その者に、知らせてはどうでしょうか。」

――― 鈴木というジャーナリスト? 「そいつは、波多野の事も調べていましたか?」山川が尋ねた。

「はい、波多野の事も尋ねていました。」

「そうですか、その鈴木というジャーナリストには、心当たりがあります。ですが、その者に知らせるという事は、我々も罪に問われる可能性もあります。

 いや、恐らく月成だけでなく、我々も捕まる事でしょう。そうすることで、月成のクーデターは無くなり、山名響子は救われるかもしれません。問題は、その事に我々自身が耐えられるのか?という事です。」

「それは、今一つの過ちを正せば、それと同時にそれに関わる私達も正される、という事ですね。」

「そうなのですよ。つまり、我々自身が、本当に新しい人生を生きる決意があるのか。今までのやり方を変える準備ができているのか。そこの処です。」

 田倉が、分かった、と言った。

「そうです、そこです。何故、何度も同じ人生を繰り返すのかが、分かりました。きっと、そこです。自分自身が変わることを拒んでいたのです。知らない別の路を歩むことを恐れていたからですね。しかし、その恐怖に打ち克たねば、新しい人生は始まらないのですね。」

NEXT LIFE  変革の時 21

 赤坂のクラブ睦で山川達3人が、話していた事は、協力者によって赤坂署に情報がもたらされ、それは鈴木にも伝わった。情報は、月成のクーデター計画と、12年前に行方不明になった佐久間良治の拉致されたという噂だった。

「鈴木さん、月成を逮捕できないのですか?」

「今は、月成は、公安が見張っているようだ。我々には動かないようにと、石井刑事から指示があった。」

「佐久間良治の件はどうなんですか?」

「甲州建設に恐らくいるのだろうけど、12年もそこで働いていたとすると、それを拉致と呼べるのか?」

「でも、会ってみない事には始まりませんよね。行ってみましょう。」

「そうだな、まずは甲州建設から当たってみるか。ところで、凛ちゃんはどうしているんだ。相変わらず、セミナーか?」

「ええ、セミナーで山梨にもよく行っているようです。」

「どんなセミナーなんだ?月成と関係あるのじゃないか?」

「いやあ、内容までは分からないけど。そもそも、神州光輪会の教義が良く分かりませんから。」

「kさんも、一度セミナーに参加してみたらどうなの?10年も一緒にいて、それも分からないというのは不自然だよね。」

「そうですね、まあ、考えておきますよ。」

――― 甲州建設の遠藤に、鈴木が連絡取り、佐久良治と会いたいと伝えると、あっさりと了解された。

「佐久間さんは、此方へは、いつ頃から来られているのですか?」

「私は、学生の頃に神州光輪会の学生部で活動していました。そのセミナーがこの近くで開かれていて、そのご縁で此方で働くようになったのです。」

「学生部というのは、どんな活動をされていたのですか?」

「玉響クラブという学生のクラブがあり、そこでの交流活動です。新入生には神州光輪会の教義や仕組みなどを教えていました。」

「此方に就職されたのは、ご自分の意志で、という事ですか?」

「はい、そうです。」――― 本当は自分の意志ではないが、もしそれを話せば、凛に危険が迫る。だから、そのことは言えないのだ。

「今も、神州光輪会の活動を続けておられるのですか?」

「はい、今も、続けています。」

「では、セミナーにも参加されていますか?」

「はい、今でも参加しています。」

「では、セミナーの講師で高場凛という方をご存知でしょうか?」

「高場凛、ですか。ええ、良く知っています。」

――― 佐久間良治は、高場凛を知っていたのか。

「セミナーでご一緒されることもありますか?」

「はい、一緒に参加することもあります。その、高場凛さんが、どうかしましたか?」

「いえ、私の友人が、その高場凛さんの知り合いなのです。ところで、佐久間さんはお姉さんがいますか? 佐久間ゆかり、という方ではないですか?」

「いえ、姉はいませんが。」――― 何故、この男は姉を知っているのだ?

「そうですか、その方の弟さんも良治さんと言いまして、12年前に行方不明になりまして、それ以来ずっと探しているのです。師岡慎一さんを知りませんか?」

「いやあ、知りませんが、どういう方ですか?」

「その方も、佐久間良治さんを探していたのですが、探している途中で事故に遭い亡くなったのです。」

NEXT LIFE  知らない世界 1

――― 師岡さんが、亡くなった?僕を探して、事故に遭った?どういうことだ。それでは、姉さんは、一人で悲しい思いをしていたのか。

「それで、貴方はその方たちと、どんな関係なのですか?」

「私は、師岡さんの後輩です。それで、私が今は、佐久間ゆかりさんの弟さんを探しているのです。というのも、師岡さんの事故には不審な点がありました。唯の事故ではないように思えます。

 そして、行方不明の弟さんも何かの事件に巻き込まれているのではないか、と心配しているのです。」

「そうですか、今も探しているのですね。」

「もし貴方が、私の探している佐久間良治さんについて何か心当たりがあったり、また思い出すことがあれば、連絡を下さい。ちなみに、私の探している佐久間良治さんも、居なくなる前は、神州光輪会に入会していたそうです。」

――― 佐久間良治は、頑なに認めようとしないが、何か理由があるのだろう。無理には聞かない方がいいのだろう。

 だが、セミナーで高場凛と会っていると言っていたな。どういう事だ。高場凛は佐久間良治が行方不明になっているという事を知らないのか? それとも知っていて、俺たちに隠しているのか。

――― ルナで、佐久間良治の事をゆかりママとkに説明した。

「じゃあ、何故か理由は分からないけど、佐久間良治は甲州建設にいて、ゆかりさんや師岡さんの事は知らないふりをしているのですね。」

「そうだ、しかも高場凛とはセミナーで会っているそうなんだ。」

「でも凛は、その事を何も言いませんね。やっぱり何か理由があるのですね。」

「そもそも、何で行方不明になったのかが分からない。それは、神州後輪会と関係があるのだろうけど、誰かが証言しない限り分からない事だ。」

ゆかりママが「私が、直接会いに行っては駄目かしら。」と言った。

「そうだな、それが確実なのだろうけど、却って良治さんを苦しめるのかも知れない。」

「よし、今度凛のセミナーに付いて行ってみますよ。そして、凛に確認してみます。何を隠しているのか。」

「でも、次のセミナーはいつの予定なんだ?」

「たしか、7月7日の予定です。」

「それまで、凛が無事であればいいのだけれど。月成の動きが気になるな。」

――― 鈴木は月成の動きが気になる様だったが、私はそれよりも別の事が気になっていた。

「でも、私達は以前に、佐久間良治に会ったことがあるのでしょうか?」

「いや、俺の記憶には無いな。今日会ってみても、何も感じないんだよ。初めてなのじゃないかな。」

「それは、どうなのでしょうか。以前の世界では、佐久間良治は、死んではいないのかも知れないけど、実際行方不明で、生きている確証はなかった、当然何の縁もなかったわけですよね。そういう人と新しく関係が生まれるというのは。」

「そうだよな、今までは、少なくとも生きていた人間との関係の変化や行動の変化だったわけだけど、これは全くの未知の事態だ。新しい出来事が生まれる可能性がある。」

「例えば、どんな事ですか?」

「例えば、山名響子が死なない世界だ。」

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歴史的事実に改編を加えた妄想小説です。

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