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NEXT LIFE  天の船 1

 久し振りに訪ねたエクスには、不愛想でカーリーヘアーの女性はいなかった。先輩の話によれば、彼女の奔放な異性関係に我慢するのを止めた結果、別れることになったのだそうだ。

 元々、先輩としては、彼女の性癖については承知していたし、先輩自身も浮気するタイプだったので、責める資格は無いと思っていたのだという。

 だが、ある時、その様な関係に嫌気がさした。それは、直接的にはこれと言った原因が思い当たらないのだが、長年の不満が爆発したのかも知れない。しかし、それは、彼女の所為ではなく、むしろ自分自身の浮気好きな性格に対して嫌気がさしたのかも知れない。

 自堕落な性質と、生活が嫌になった、或は、低きに流れる自分が嫌になった。そう、何がきっかけだったのかは分からないが、自分の生活態度を改めたくなったのである。

 それは、乱雑に散らかり、汚れてしまった部屋に、ある日我慢が出来なくなり、掃除をしたくなった、と云う事かも知れない。一人であれば、簡単だが、共同生活の場合は、相手にも承諾了解が必要になる。同じ方向を目指さなければならない、それが出来なければ、別れるしかない。

 それは、性格の不一致だろうか?それとも価値観の違いだろうか。人はずっと同じ性格でも、価値観でもいられ無くなる場合がある。このような場合、契約不履行なのだろうか。自堕落な生活を改めたいという場合、それは、自堕落を前提として結婚した相手に対しては契約不履行なのだろうか。

 だが、自分自身が、ある時、何かの絶望感から、自堕落な生活を選んでいて、そしてそれが、いつしか自堕落だとも思わなくなってしまった頃。社会の底辺のような、価値観をすっかり身に着けてしまった頃、今度は、その底辺の生活の匂いに、吐き気を催すこともある。

 先輩は、かつては自ら、その様な生活を選んでいて、その様な相手と暮らしていた。それが今は、出来なくなったのだという。勝手な話ではある。

 犯罪者の道を選んでいながら、ある時、改心して更生したいと思う、その為には、犯罪者仲間から離れる必要がある。傍から見れば、当然に別れた方が良い相手でも、本人にしてみれば、裏切り行為ではないかと、自らを責め、別れることが出来ない場合もある。相手からも、裏切り者と、責められることもある。

 先輩も、その様に、自分の裏切り行為を責めたようだ。だが、何とか、勇気を振り絞って、生活を改める、つまり、お互いに浮気をしない、そういう提案をした結果、別れることになったのだ。

 これが、人の縁なのか。物事を、明らかにしようとすれば、別れる事になる関係があるのだ。曖昧にしたまま、ずるずると良くない関係を引きずることもあるが、それをしているのは、相手ではなく、自分自身なのである。

「先輩は、どうしてそんなに変わることが出来たのですか?」

「分からないよ。でもね、山本先生の話を聞いているうちに、意識が変わってきたのだよ。多分、その先生の話をここに聞きにくる人たちがいるのだけれど、知らず知らずのうちに、その人達の感情が伝わって来たのではないかと思う。自分を変えたい、と皆思っていたようだ。」

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