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月の光 9

 城外開拓区警察署では、昨日の閃光と音について、マスコミや住民からの問い合わせが相次いでいた。警察署の表にまで、数台のマスコミの車両が待機し、カメラマンやレポーター、その助手などがドリンクボトル片手にうろうろと徘徊し、それを見た2人の警察官は益々不愉快な気分になった。

 「このゴミども、何とかなりませんかねえ。」中西が、さも迷惑そうに呟くと、「言葉に気をつけろ、余計なことを聞かれたら、それでまた大問題だ。」と斎藤がたしなめた。「そうですね、あいつらは問題を起こしてなんぼの連中ですからね。火のないところでも、煙を立てようとするのが生きがいだ。」と中西は収まらない様子で苦々しく吐き捨てた。

 「資料課の柳田を呼べ。」斎藤は、捜査課のデスクに戻ると、すぐにそう言った。中西が、資料課の柳田里美を連れてくると、斎藤は短く刈り上げた白髪頭から染み出る汗ををハンカチで拭いながら、吾妻春清についての家族台帳と、経歴について調べるように指示した。

 吾妻春清は古代地球史の研究者で、大学院を出た後は飛鳥研究所で勤務していた。家族は妻の吾妻千春と、息子の清人の3人だった。現住所に移ったのは13年前、春清が35歳の時だ。妻の千春は宇宙物理学の専門家で、やはり飛鳥研究所で勤務していた。

 中西が腑に落ちない様子でぼやく。「何ですかね、この飛鳥研究所というのは。どうして、古代史家と宇宙研究者が一緒に働いているのですかねえ。」

 「まあ、それも確かに変だが俺にはその辺のことはよくわからないからな。それより気になるのは、息子の清人だ。これを見ると、小学校、中学校とも障害者支援センターで教育を受けていることになっている。現在は18歳のはずだが、学校には通っていないし、かといって職歴もない。もし何らかの障害があるのならば、家にいるはずじゃないのか?

 その場合にはケアワーカーの支援を受けているのじゃないのか。そうでないのならば、どこかの福祉センターに所属しているのが普通だ。どちらにせよ、一人で家にいることは考えにくい。」斎藤は疑わしそうに眉を寄せた。既に犯罪者を追う目つきになっている。
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