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月の光 20

 列車ハウスと、その西側にある野馬除け土手に囲まれた葦の湿原との周辺は交通規制が敷かれた。と言ってもここへ来る為の公道は2本しかない。

 その内の1本は、東からきて列車ハウスの北側を掠めて北上していく。もう1本は西からきて野馬除け土手の西側で南へと折れてゆく。ともに検問が置かれ、マスコミやデモ隊が近づくことも許されなくなった。突然の規制にマスコミ各社は反発したのだが、緊急事態の一点張りで詳しい説明はなされなかった。

 大和署長の命を受けた、斎藤は裁判所の許可証を持って列車ハウスに向かった。

 「何だか、話が大袈裟になりましたね。それにしても列車ハウスの撤去なんて、どうやってできるんですか?この裁判所の許可証では、内部の捜査だけですよね。まだ撤去は強制的には出来ませんよ。」
 中西は、事態の展開についていけなかった。署長の撤去命令にも、納得はしていないようだった。
 
 「まあ、言われたことを忠実にやるだけさ。中に入れば、何か新しいことがわかるだろうからな。そうすれば、撤去の理由も見つけられるかもしれない。」

 「それにしても、万一ですよ、中にその地球外生命とかが居たら、どうします?発砲しても良いのですかね?」

 中西も、ありえない話だといいながらも、やはり地球外生命体の事を心配しているようだった。

 「うむ、状況次第だろう。危険だと判断すれば、発砲もやむを得ないさ。だが、一番に注意すべきは吾妻清人の安全だろう。そこも含めて、内部をよく観察する必要がある。」

 現地に近づくにつれ、斎藤も緊張感が増してきていた。何しろ、全く初めての事態なのだ。こんな事を、ただの生活安全課の捜査員が対応してよいのか、という疑問もあるのだ。

 『それにしても、考えてみれば、この事件を俺たちに任せたということは、署長は、そもそも科学捜査班の話など全く信用していない、ということだ。地球外生命体だの存在するはずがないと思っているのだろう。

 冷静で上司に逆らわない、というのは裏を返せば、相手を馬鹿にしているということだ。署長の頭の中では、列車ハウスを撤去して、精神障害者の吾妻清人をどこかの施設に入れてしまえばそれで解決だと思っているのだろう。

 何しろ、両親が見放しているくらいなのだから、事は簡単に運ぶと思っているに違いない。ホタルや蜂の騒ぎも、一般人を遠ざけてしまえば、そのうち収まるに違いない。そもそも、大きな被害などはないのだからな。』

 斎藤は、署長の思惑が読めたような気がしてきた。そうすれば少しは気楽になるかとも思ったのだ、一方でまた別の心配もわいてきた。
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