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月の光 63

 大沢美穂は、自信たっぷりに説明した。

 「私は、既に吾妻春清氏の論文を見ましたよ。そして、モナさんがエ・モナの生き残りで、ここがその時の箱舟を再建したものだと言うことも、分かっています。

 そして、先日、植物がたちまちのうちにアーケードを作り、そしてすぐに元に戻った様子も見ました。

 だから、私はここがエ・モナのいたバビロンを再現しようとした場所だと思っています。あなた方は、その為に、ここを作ったのではないのですか?」

 大沢美穂の推測に、斎藤は恐れをなした。つい先日、吾妻教授から、この列車ハウスとモナの実態を聞かされたばかりで、その時は驚いて、何も言えなかった。

 それなのに、この大沢美穂は、平然として話している。斎藤は、心底この大沢美穂が何者か知りたいと思った。

 「大沢美穂さん、あなたは一体誰なのですか。幾ら、吾妻春清氏の論文を見たからと言って、そんなことを平然と言えるのはおかしい。あなたは、何を知っているのですか。」

 「斎藤さん、今日は私が尋ねる日なのですよ。なので先ずは、私の質問に答えて頂きたいのですよ。」大沢美穂は、悠然としていた。

 モナは、迷っていた。この大沢美穂が信頼できる人間なのか。本当のことを話しても大丈夫なのだろうか。だが、そのような事を考えるのは、得意ではなかった。

 モナは、確かに古代の文明を築いたエ・モナの生き残りではあるが、余り文明的ではなかった。むしろ、農作業や、この前やったように、土を掘り返してあっという間に墓を作ってしまうなどの、土木作業に向いていた。

 エ・モナの中でも、現場作業向きのタイプで、知的作業は苦手だったのだ。だから、このような心理的な駆け引きを伴う、交渉事には全く不向きだった。

 清人も、当然、他人との交渉などできるはずもない。会話することが困難なのだから。相手の意図を受け止めたり、推理するなどできるはずもない。他人との関係における自分の感情や、要望すらまともに認識して来なかったのだから。

 大沢美穂との交渉は膠着してしまった。

 大沢美穂は、心理的にも余裕があり、知識もあり、ここでの出来事を論理的に理解しようとしていた。そして、この列車ハウスの目的が何か、彼女なりに大方の推測はついているのだろう。

 ただそれを確認しようとしただけなのだが、相手が悪かった。ここには、それを冷静に対話できるだけの人間がいなかったのだ。

 モナも、清人も黙ってしまい、固まっている。斎藤は、自分の疑問に夢中になり、大沢美穂への質問しか頭になかった。中西は、大沢美穂の容姿をずっと凝視している。

 中西は、大沢美穂が美人でスタイルが良い、だけではなくとても知的なのだ、と気づいた。アイドルに見ほれる一ファンになってしまった様だった。
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