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月の光 111

 玄海灘原子力発電所では、既に運転停止し、廃炉が決定してからも30年がたつ。だが、廃炉の作業は遅々として進まなかった。1世代に相当する年月であり、問題は費用だけではなく技術者の不足にあった。

 原子力発電の技術が放棄された以上、それを専門に学ぶ若者はいなくなった。ただでさえ、人口減少の為若い技術者が不足しており、政府は有用な再生エネルギーの技術を確保するため、既に不要となった核技術に対する支援を減少させたのである。

 その為、廃炉計画は立てたものの、それを実行する人的資源が不足してしまった。玄海灘原子力発電所でも、技術者不足は深刻で、このように冷却装置の電源が失われると言う不測の事態に対応できなくなっていた。
 
 田上局長は「直ぐに迎撃核ミサイル担当の技術者を招集し、玄海灘原子力発電所に派遣する。」このように命令を下したのだが、前途は険しかった。

 陸軍省にはこの時、核ミサイルを自力で開発する技術はなく、他国の技術者の指導に頼っている状態だった。その為、迎撃核ミサイル担当の技術者と言っても、通常の原子力発電に関しては知識も経験も殆どなかった。

 一方、橋本率いるヒューマノイドの部隊は、もうすぐ作業が完了するところまで来ていた。

 田上局長は「本来の任務とは異なるかも知れないが、原子力発電所の応援を頼めないか。」と橋本に依頼した。

 橋本は、暫く思案していたが、「こちらの作業は、ほぼ完了見込みですので、出来るだけの人員を派遣しましょう。ただ、予定外の作業になりますので、私も同行しますが宜しいですね。」と、自ら応援に行くことを告げた。
 
「勿論です、そうして頂ければ有難い。」田上局長は、橋本から思った以上の協力が得られたと喜んだ。

 橋本は、空港に残すヒューマノイドNGX4001以下60名に作業の完了を指示し、深夜というよりも、もう明け方に近い午前3時、空港バスにヒューマノイド40名と共に乗り込んだ。

 霧は一向に晴れる様子はない。高速道路を走る車はなかったが、時折、雷鳴と共に稲妻が走った。福岡を過ぎ玄界灘にでると、霧はいつの間にか雨に変わっていた。海岸沿いを走る高速道路には、絶えず日本海からの強風が吹きつけ、雨と一体となった波が道路を犯していた。
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