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月の光 115

 陸軍省九州防衛局の田上局長は、機長の大島を伴って、首都圏城内北の丸区の陸軍省本部を訪れていた。表向きは北部九州での昆虫の侵入状況の説明の為だったが、実際には、航空宇宙センターの派遣職員についての報告が主たるものだった。

 「噂ですが、ロボット兵士が投入されたと聞きました。あなた方は実際にご覧になってどう思われましたか?」陸軍省本部監察官の加賀美が2人に質問をした。

 大島が答えた。「自分は、彼らが道具を使わずに手から光を発して、光ケーブルを修復する様子を見ました。」

 「田上局長はどうですか。」

 「はい、それが自分で直接確認したわけではありませんが、原子力発電所の職員によると、やはり手から光を発していた、と聞いています。それと、防護服ですが、どうやって用意したのか、全員着用していたと聞きました。」

 大島がさらに付け加えて、「彼らは、何の知識もないのに、航空機の操縦をすることができました。」と言った。

 「それらを見て、どうですか?ロボットですか?」加賀美観察の問いかけに大島が答えた。

 「確証があるわけではありませんが、非常な違和感を覚えました。人間ではないと思います。橋本本部長は、彼らは改良されたヒューマノイドだと言っていました。」

 「ヒューマノイド?具体的にはどういう意味ですか?」

 「サイボーグのようなものだと言っていましたが、自分にも、それ以上具体的なことは分かりません。」

 「そうですか。では、何らかの手術などがされている、ということでしょうか。」

 加賀美も、それがどういうものなのかは、想像できなかった。しかし、政府に報告せずに、ロボット乃至はサイボーグを使っているとなれば、問題である。

 この時日本政府はまだ、ロボット兵士の開発や使用を認めていなかった。それがまた、サイボーグともなれば人体改造の可能性があり倫理的な問題もはらんでいた。

 加賀美が困惑した表情を浮かべると、田上局長が別の問題を報告した。

 「北部九州に出現したアリですが、職員たちの話では、橋本本部長は、そのアリを改良されたものだと言っていたそうです。」

 「改良されたアリ、・・・ですか?どういう意味でしょう。」

 「はい、自然界に存在するアリではない、と言っていたようです。」

 田上も詳しくは分からないが、サイボーグと言う言葉を聞き思い出したようであった。

 加賀美にとって、それは予想外の報告だった。そのアリが、もしもロボットなのであれば、現状での対策は困難である。陸軍省としても、ロボットの開発が急務となる。

 一方で、航空宇宙センターの派遣職員がロボットであった場合、その開発を、現状では認められないのだが、ロボットのアリに対応することを考えれば、むしろその開発は支援すべきものとなる。

 監察官の立場としては、いずれにせよ航空宇宙センターの問題は見逃すわけにはいかなかった。

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