ルーム・ノヴァスの伝説 (その 10)
タブレットの解読の10日目
講師オズメクのは云う。
「遊牧民メルキトやサラカン、オグズなどの人々による国家も、時がたつにつれ文明化し、都市に人々が集まり、遊牧民の中にも都市生活を好むものが現れました。
彼らはまた、『ケマルによる救済』に帰依し、心の平安を願うようにもなりました。
そして、ついに王族の中にもその信仰に帰依するものがあらわれ、遊牧国家でも『ケマルによる救済』の信仰が国家の宗教になったのです。
すると、この宗教を信仰するものは国家の中で上層階級となり、いつの間にか特権を求めるようになってしまいました。
このことは、二つの結果をもたらしました。
一つは、遊牧民の弱体化です。彼らは、当初は戦士として、合理性を追求したのですが、都市の文化に触れるうちに、戦争を厭うようになり、自らの戦士としての行いを悔いるようになってきたのです。
もう一つは、遊牧民の支配に反発する人々が、国家宗教となった『ケマルによる救済』に疑いを持つようになったことです。この人々の中からまた新しい予言が生まれました。
預言者バルクミスは西の海辺に追い詰められた人々の中から現れました。
彼は、初め『ケマルによる救済』の熱心な信者で、心の平安を求めていました。
一方で、遊牧民の支配に甘んじることには納得していませんでした。
しかし、教会の司祭たちは、遊牧民の支配の正当性を説き、心の平安は秩序に従うことにある、と説いていました。
教会は遊牧民の王族から多額の寄付を受け取っていたのです。
バルクミスは信仰の問題で悩みました。その時、『西の海のルーム人の伝説』が夢に現れたのです。
彼は夢の中で、ルーム人に会い、彼らが平和で独立した文明を築いていることを知りました。
彼らは、はるか昔に遊牧民と戦い、海の向こうへ逃げたのです。
しかし、彼らは夢の中で、『再び帰ってきて、地上に新しい平和な王国を作る』と約束しました。
それが『ルーム・ノヴァス』という国でした。
バルクミスは、この予言を、人々に伝えました。
唯一神ハジュを否定したわけでも、『ケマルによる救済』を否定したわけでもありません。
ただ、『今の世界は、神の正しい理想とは違っている。ジームラ・ウントを始めとする、同盟都市が遊牧民の支配下にあるのは間違っているのでそのことを正せ』と主張したのでした。
海辺に追い詰められていたジームラ・ウントの人々は、この予言を歓迎しました。
こうして、預言者バルクミスの新しい教えが誕生したのです。
次回は、ルーム人の来襲について説明いたします。」
今日は、ここまでだった。
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