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ロクサーヌ (その13)

 ヒトミは続けていった。「私たちは同じ船に乗っていたの。ここは私たちの実験場なのよ。ここで、私たちは歴史を作り出す研究をしているのよ。」私にはよく理解できない事だった。「歴史を作り出すって、どういう意味なのだかよくわからないけど。」「あなたは、忘れているのかもしれないけど、私たちは講師のもとで人類の歴史を作り出すプログラムの研究をしていたの。地球の状態とそっくりな天体を作り、それは他のチームがやっているのだけど、私たちは人類の5万年分の歴史を再現する研究をしているの。あの船はそのための研究所よ。はじめは、順調だったのだけど、マネーのない社会になってからもどうしても、人は完全な自由にならない。監視社会になってしまったのよ。最初はプログラムの不備かもしれないと思って調べていたのだけど、原因は不明だった。それで、直接歴史の現場へ向かうことになったの。」そうか、あの船に乗る夢はそういうことだったのか、と私は思った。私がヒトミの説明を聞いていると、講師のウシュパルクが近づいてきた。ウシュパルクの話では、敦煌の東と西を境に亀裂が生まれていた。敦煌より西の砂漠の向こうでは、戦争が繰り返されている。予定ではすでに戦争状態が終わり、人類は経済的問題からも解放されていて、誰も支配せず、支配されない対等な関係の社会に向かうはずだった。しかし、この仮想の地球上にいくつかの亀裂が走り、歴史がそれぞれ異なる方向に向かっている。その亀裂は、歴史の特異点と呼ばれ、時間の流れも違ってしまっているのだ。敦煌の西側で起こった野蛮な戦争状態は東側の人類にも影響を与えている。講師によると、実験がうまくいかない理由としていくつか考えられる。1つには、西側からの戦争の脅威から社会を守るために、東側では監視社会の道を自ら選んでいる。2つ目として、東側では本来自由になっているはずなのに、人類がその自由を行使することに未熟であるため退行が起こっている。この場合には西側は関係ないと思われる。3つ目に、西側から砂漠を越えて避難してくる人々のため予期しない影響が起きている。その他にも最も考えたくない事として、悪意ある何者かがこの実験場に侵入している。その場合は研究の継続そのものが脅かされる事となる。これらの原因を探るために歴史実験の現場へ行くことを決めたとき、私は他のメンバーと別れ自ら望んで砂漠の西側へ行くことを選んだのだった。
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