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ルーム・ノヴァスの伝説 (その 39)

 メサス - 7千年前

 メサスの神殿で。
 教主はセルナに問いかけた。
「あなたは、どのような未来を望んでいるのですか。あなたの描く未来で彗星は現れるのですか?」

「私は、誰もが自分の未来を自由に決定できる、誰かの支配をうけない未来が欲しいのです。」

「それは可能なのですか?あなたには、その未来が見えていますか?」

「まだ分かりません。けれど、ジームラ・ウントの支配した未来は、自由はなかったと思います。情報が明らかにされず、知らないうちに決定されたのだと思います。」

「もし、情報が明らかにされていれば、どうなったのでしょうか?彗星はこないのですか?」

「彗星は来たのかもしれません。しかし、多くの人々が置き去りにされることはなかったと思います。」

「そうですか、ではあなたは、自分でも不確かな未来のために、歴史を変えたいというのですね。その結果はどうなるかもわからずに、ただ自分の想いが満たされないから、ということですね。」

「ですが、取り残された人々は救えるのかも知れません。」

「すでに起きたことですから、その人々を救うことはできないでしょう。また、これから起きる新しい歴史でも救えるのかはわからないでしょう・・・。

 つまり、あなたがやろうとしていることは、あなただけの未来なのです。それはジームラ・ウントの支配と何ら変わることはないでしょう。きっと同じ歴史が繰り返されるのでしょう。」

「では、どうしたらよいとお考えなのですか?」

「あなたは、超越者を見たことはありますか?」

「いいえ、それはペーシュウォーダのことでしょうか?」

「それは、たぶん違うと思います。私は一度だけ見ました。ほんの一瞬ですが。

 その方は、私の背後にいました。というより、その方の手の先、指の先に私がいたのです。まるで大きな木の枝葉の先のように私たちがいました。その方は大きな木だったのです。あるいは、巨大なサンゴのポリープの触手のその先の一つの細胞が私でした。その方はその全体なのです。

 振り向いてその方の顔を見ると、まるで燃え盛る太陽のようでした。
口をあけて笑っていたように思います。そして、その方の足元の指の先で私が前を向いた時に、突然気が付いたのです。

私自身がその方だと、その方は全体です。『大きな私』なのです。そして、この私は『小さな私』、その方の一部なのです。

 周りには私と同じような、枝葉の先の一つ、触手の先の細胞の一つ、指先のその先である私たちが大勢いたのです。みな笑っていました。けれど皆少しずつ違うのです。

 私は、その方を見上げると同時に、私自信を、私たち全体を見下ろしていました。その時に思ったのです。皆それぞれ、一つのものでありながら、それぞれに違う生を生きるのだと。

 ですから、私は歴史を作り直すことはありません。今のこの生が、不運だったとしてもそれでよいのです。私と同時に少しずつ違う私が、少しずつ違う生を生きているのです。

 過去も未来もないのです。今この瞬間に多くの私が、多くの生をいきているのだから。そのうちのどれかの私が、満たされなかったとしても、それでも、私は、その私の、それぞれの私の生を懸命に生きることが大事なのだと思います。

 時間というものが、あると思えば、やり直しもあると思えるかもしれません。しかし、私が見たその世界では時間はないのです。すべてが同時に起きているのです。
私は全体であり、そのうちの一つである。ほんの一瞬でしたが、そのように思いました。

 ですから、セルナさん、あなたはあなたの生を思いのままに生きてください。私は、この世界の私が滅びるとしても構いません。その時まで、『この私』を生きるだけなのです。」


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