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ルーム・ノヴァスの伝説 (その 76)

kの回想 5


数日の後、貿易風でマスターと芦名のことを話した。


「アパートに彼の学生証がありましたので、大学に行ってみましたけど、1か月くらい前から休んでいるようでした。実家は秋田県の比内町西舘でした。


確かにいたようですけど、実家に聞いても今は連絡がないようでそれ以上はわかりません。

安禄山さんは、事態が呑み込めずに困っている様です。

外見は芦名ですが、中身は完全に入れ替わっているみたいです。」


マスターが尋ねた。

「安さん、あなたはどうなんです?今、自分の状況が分かりますか?」


「私は、ここがどこなのか、何故自分がここにいるのかは分かりません。しかし、自分が安禄山で、ついこの前まで、戦いの中にいたことはハッキリ覚えています。


自分は史思明と共に、玄宗皇帝の過ちを正し、楊一派を排除し天下の政道を正す為に起ち上がりました。


それというのも、昔若かった頃のある晴れた春の日の事ですが、いつものように馬を駆って、草原を行く隊商を監視していた時のことです。


少し休もうと思って、木陰に馬を止めてウトウトとしました。すると、夢の中で、奇妙な若者が現れ、人々を助けに来て欲しいと言うのです。


彼は、私を連れて竜に乗りました。そして空高く舞い上がり、中国の全土を見渡し、それから西の彼方、西域諸国を見ました。そこが私たち一族の故郷だと知りました。


そこへ更に西方から一団の軍隊が現れ、人々は逃げ惑いました。北方の山の中に逃げた人々はやがて全員が殺されました。


その悲鳴を聞いているうちに『助けて』と呼ぶ声が強く耳に残りました。

若者はまた私に『助けに来て欲しい』と言いました。


それから気が付くと、また元の木陰にいました。あまり不思議な夢だったので、私は胡人の商人たちに調べてもらいました。


そこで判ったのは、西の方でアラブ人たちが攻めてきて、私たちの先祖の土地が奪われ、中国の西域も脅かされているということでした。


私はまだ18歳でした。それから貿易の仕事をし、情報を集め、胡人たちの仲間を作りました。30歳の頃、張守珪節度使の下で軍の任務に就きました。そうして力を蓄えたのです。


唐歴天宝十年(西暦751年)玄宗皇帝の軍隊はアラブ人と戦いましたが、カルルク族の裏切りに会い、タラス河畔で敗れました。


皇帝は楊貴妃との生活におぼれ、政治を怠り始めました。このままでは故郷のみか『この中国もアラブ人やチベット人に奪われてしまう』と思い、唐歴天宝十四年(西暦755年)に史思明と共に蹶起したのです。


私は、中国と西域諸国を蛮族から救うつもりでした。

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