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ロクサーヌ (その20)

 長安までは南にくだりチーリェン山脈沿いのルートを通る。チーリェン山脈は標高4000mを超える山々が連なり万年雪がとても美しい。列車の車窓を眺めながらミトラが不満そうに言った。「敦煌ではコミューターで快適だったのに、どうしてこんな古びた列車なんだろう。まるで別世界だよ」ナースティヤが答えて言った。「別世界なのよ、この新聞を見て長安ではチュルクの反乱がおきているらしいわ。見てこの写真、酷い暴動になっているのよ。敦煌は安全で静かだったけど。チーリェン山脈の南にある青海湖もチベット族に占領されたと書いてあるわ」
 しばらくウトウトしているうちに車内アナウンスが流れた。「長安まであと10分で到着します」「長安では反乱軍による略奪が起きています。この列車は長安に到着後は車庫に入ります。十分ご注意下さい」ミトラがまた言った。「こんな所に来てしまってどうするんですか?」ご主人がたしなめるように言った。「こんな時のためにお前がいるんだろう。お前の役目は戦うことなんだから、お前とバルナが先頭に立つのだ」ミトラとバルナは、ソグディアナに居た頃はチャルカと呼ばれる武人の子孫だった。長安に列車が着くと、駅は群衆たちで混乱していた。中には太鼓や金物を鳴らし旗を立てて踊っている人たちもいた。余りの騒々しさで声も聞き取れないくらいだった。ご主人は「ひとまず、街へ出て様子を見よう。ミトラは先頭にたち、バルナは後ろを見てくれ。皆、絶対に離れるんじゃないぞ」元々キャラバン商人だったので、このような非常時はむしろ慣れっこで、ご主人も生き生きとしているようだった。ミトラもバルナもいつの間にか懐に刀を忍ばせていた。
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