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『kの回想』 18

芦名とロクサーヌは、ジェライルが用意してくれた、百人町のマンションの一室にいた。

ロクサーヌは、仕事もなく自分を紛らすことが無くなると、元々抱えていた当た愛情飢餓からくる不安が強くなっていた。

「ねえ、芦名さんは、これからどうするの。あなたのアパートは、安禄山が住んでいるし、もう、あなたのいる場所はこの世界には無いじゃない。いても、仕方がないんじゃないの?

私も、することがないし、ただ毎日が無駄に過ぎて行くだけじゃない。一度ソグドに帰ろうかな。両親がどうしているのか気になるし。

それと、どうして私を売ったのか、愛してなかったのか、聞いてみたい。何だか苦しいのよ。わかる?

私は、生まれてきて、何も楽しいことがないの。親に愛されてなかったなんて、どうして生んだのか、聞いてみたい。謝って欲しいのよ。何で、こんな辛い人生を生きなきゃいけないの。

それとも、両親は私のことを心配しているのか、確かめてみたい気がするの。芦名さんは、ご両親はどうしてるの?」

芦名は、子供の頃を思い出すが、そこには母親の記憶がなかった。あるのは、行方不明になり、自分を置いて逃げ出した父親の記憶だった。
同じ愛情飢餓でも、芦名の心は冷たく凍り付いていた。

「僕の両親はもういない。父は子供の頃に行方不明になった。母は、僕を生んですぐ病気になったらしく、小さい頃に別れて会った記憶がない。

僕は叔父夫婦に育てられたんだ。もっとも、同居はしていなくて、父の家に一人でいたけど。」

「お母さんは生きているの?」

「いや知らない。誰も話さないし。僕も聞いていない。」

「淋しくないの?」

「淋しいさ、でも、仕方ないよ。生れてきた以上は、生きていくし、一人でも生きられるから。」

「ただ生きているだけじゃつまらないし、死んだ方がいいとは思わないの?」

「死ぬのは、怖いし、第一何故死ななきゃならないの?生まれた以上は誰でも幸せになる権利はあるだろう。

親がいなくても、死にたくはない。ただ淋しいだけで死んだら、悔しいじゃないか。そんな死に方はしたくないよ。」

「じゃあどうするの?何かやりたい事でもあるの?」

「何をやりたいかは、分からないよ。でも、まだ何もしていないのに死んでしまうのは嫌だ。何かはしてみたいと思っているよ。」

「私も、このまま終わるのは、悔しいと思う。あの時、本当に死ぬんだと思ったけど、すごく悔しかった。だから、私も幸せになりたい。

けど、どうしたら幸せになれるのか分からない。淋しいし、怖いし、不安なのよ。」

「焦ることはないよ。僕たちは不死身の身体を持っているのだから。これから、じっくり考えればいいさ。」

芦名は、初めは、先行きに不安なロクサーヌをなだめるつもりだったのだが、話すことで自分の気持ちを自分で理解しようとしていた。

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