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『kの回想』 19

芦名は、ロクサーヌというよりも、自分自身と対話していた。
自身の感情を、外に向かって表明したかったのだ。
凍り付いたはずの胸の奥から、溶け出そうとするものがあった。

「僕は、あの日テレビで、倒壊するビルの映像を繰り返し見たんだ。大勢の人々が叫びながら死んでいくんだけど、その人達は突然訪れた自分の死の理由が分からないんだ。

一方で、ビルを攻撃した人は使命感をもって破壊し、人々を殺害した。彼らは正義の為だと思って、悪の支配を打ち破るために戦ったのだろう。

けれど、何が正義なのか、殺害された人々は本当に悪なのか、何も知らずに平和な日常を送っていたはずだ。これは、理不尽だと思った。その人達の声が聞こえた様な気がした。

その中で強く助けてという声が聞こえた。それが、ロクサーヌ君だったんだね。助けなきゃ、と思ったら、君のいた世界に来ていたんだ。

それまで僕は、人を助けなきゃなんて、特に思ったことは無いよ。他人は他人で、自分のことで精一杯だったから。そして、自分でもどうやって生きていいのか、分からなかったし、目的もなかったから。

ただ生きているだけで、死んでいるのと変わらなかったんだろう。でも、本当に死ぬんだと思ったらやっぱり悔しいよ。生きたいと強く思う気持ちが湧いてきて、あの理不尽さに怒りが湧いてきたんだ。

君の世界に行ってからは不思議なことの連続だったけど、でも今は生きてみようと強く思っているよ。」

池袋で。
私清原は、マスターの安倍と安禄山と共に世界統一平和教のあるビルの向かった。
「このビルの25階ですね。」
「でも、ワンフロアを全部使うなんて随分とお金があるね。」
「うん、元は難民だと言うからどんなスポンサーが付いているのか。」

25階でエレベーターを降りると、受付に向かった。
「翔という子の母親のことでお尋ねしたい事があるのですが。
代表のムスタグさんはいますか?」

「少々お待ちください。どちら様ですか?」

「安倍と云います。」

「面会の予約はありますか?」

「いいえ、東方貿易のミルザさんから聞いてきました。」

「ムスタグはここの代表ではありません。東方貿易とも、関係ありませんけど。どのようなご用件でしょうか?」

「どなたか、お話の分かる方は居ませんか?羽栗ロクサーヌという女性が、行方不明なんですが、最後にここに伺ったと聞いたものですから。」

男性が出てきた。
「アリシェールと申します。私がお話を伺いましょう。奥へどうぞ。」

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