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『kの回想』 25

「そうすると、この教団は、中央アジアの失われた祖国へ戻ろうとしているのか?」

「そうだ、彼らは光の国を作ろうとしている。彼らは、古代のソグド人の子孫を自称しているが、問題は彼らの宗教だ。その宗教を信仰していることが、ソグド人だという事だから、彼らが作ろうとしているのは宗教国家なのだよ。」

「では、その宗教を信じない者はそこには居られないという事なんだな。」

「そうなんだ、それは彼らの敵である闇の世界の者ということになるんだ。彼らの宗教では宇宙は光と闇の2元論で成り立っていて、光の戦士として戦うことが人間の指名になっている。教団の一員になる事で、生活が保障され、孤独から解放され、生きる目的も得られる。だから信者が増えているんだ。」

「しかし、家族にとっては悲劇だ。しかも、これから新しい国を作るのでは、戦争にもなる。新しい不幸を生み出すことになるじゃないか。」

「普通の人にとっては、死は避けられない事だが、彼らにとっては肉体の死は、生命の過程に過ぎない。心こそが生命の本体だから、肉体は乗り物に過ぎないんだ。だから、彼らは死を恐れることはないのだ。」

「だけど、そうだとしても、人は簡単には宗教に入らないだろう。何が、彼らを引き付けるのだろう。」

「彼らに共通しているのは、現在の状況が不幸だという事だ。事故に遭ったり、病気だったり、借金に追われたり。

もっと悲劇なのは、そういう親をもった為に、自分の所為ではなく親の為に不幸になる子供達だ。虐待されたり、何度も住所を変えたり。親が具体的に虐待しなくても、小さい内に、家庭の不幸を体験すれば、トラウマになってしまう。

3歳以前に起きた悲劇は記憶に無くても、心の傷になって残る。そういう子が大きくなると、無意識のうちに受けた悲劇を繰り返そうとする。暴力を受けたものは、また暴力を振るうか、受ける様になるか。

恋人や配偶者になった相手を、故意に怒らせ、怒りと暴力を誘発させようとする。借金を重ねた親を見た子は自らも借金を繰り返し、何度も引っ越した子は、自分も流転の人生を繰り返そうとする。悲劇を自ら作り出し、連鎖させようとするのだ。

その様な子供を生み出した親も、またその親から同じような悲劇を味合わされている。貧困の連鎖とかいう言葉もあるけれど、心が連鎖しているんだ。

彼らは自分が必要のない人間だと感じている。つまり、愛されていないと思っているんだ。
彼らは世間では、相手にされず、誰も彼らの話を聞かない。誰からも関心を持ってもらえない。世間は彼らのような、初めから失敗している人間たちには興味が無いのだよ。

ところが、教団に入ると教団の人は親切で、何より愛情を向けてくれる。彼らの、つまらない愚痴や、身の上話を辛抱強く黙って聞いてくれる。彼らの存在を肯定してくれるんだ。」

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