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NEXT LIFE  銀座の画廊 6

 刑事によると、登録された住所には畔倉 慶太という人物が居住していて、畔倉 香はその母親だが、随分前に失踪しているという。
免許証は既に失効しており、カード類も現在は利用停止になっている。
何故そんな人のカード入れが今更出てくるのか?

 警察は事件の可能性を疑っているようだった。
その為、第一発見者である私に詳しい状況を確認しているのだろう。
しかし、釈然としない。私は、拾得物を善意から届けただけなのだが、何か疑われているような不快感がある。

 結局、私の住所氏名と連絡先を改めて確認され、書類に署名をした。

 警察署を出ると、私は勤め先のあるマンションに向かった。そこは、首都高速5号線近くにあり問題のカード入れを拾ったマンションに隣接している4階建ての小さなマンションだ。

 1階には管理会社に関連する部屋があるが、管理人を見ることは殆どない。隣のマンションとの境界にはわずか15㎝程の隙間に笹竹が奥行10m程植えてあり、高く伸びて隣の敷地へと覆いかぶさっている。各階には1室しかないので、全部で4戸である。他の住人と顔を合わすこともまずない。会社はそのマンションの4階にあり、エレベーターがないので毎日階段を昇り降りしている。

 急な内階段の手すりはステンレスと鉄でできており唐草模様の装飾が施されている。各階の壁の窓はステンドグラスになっているのだが、外の光はあまり入らない。代わりにオレンジ色のランプが常に点灯している。

 壁には後から取り付けたと思われるエアコンやケーブルTVなどの機械類があり、工事中のような印象もある。全体に何か古びていて、しかもアンバランスで美しいとは言えないが、一方でまるで深い海の底で時を超えて生き延びようとする古代の甲冑魚のような、不気味で不可思議な廃墟の美を感じさせる。

 ここで働き始めて今年で5年目になるが、仕事の内容は殆ど電話番に近く、外出することはまずない。本社は大阪のウゴルという人材派遣の会社で、ここはその東京支店という形になっている。

 メインの業務は引っ越しのスタッフの手配だが、それ以外にも色々ある。デパートでの食材販売や、小口金融も手掛けている。それらの各種業務を4人の社員でこなしている。他の3人は外出が多く、私はほぼ内勤である。結果として電話番になっている。

 つまり、一日のほとんどを一人で、この古びた建物の中で過ごしている。
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