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ロクサーヌ (その23)

 タワーの中は吹き抜けになっていて私は下を見下ろした。はるか下のその先は暗くなっていて見えなかった。そこへ女性の姿が見えて、ゆっくりと滑るように近づいて来る。金髪の長い髪はふわりと揺れているように見えとても穏やかな様子である。彼女は「ロクサーヌ、あなたに伝えたいことがあります。私の名前はペーシュウォーダ『先に創られたもの』と呼ばれています。私たちの文明は1億年の間繁栄と衰退を繰り返しました。そして最後の繁栄が続いて5万年が過ぎたころ私たちの文明は、星々の間を自由に行き来できるようになり、『新しい宇宙』を手に入れた、と思いました。エネルギーは無限にあり、宇宙の謎をほぼ解明できたと思ってしまったのです。しかし、それは誤りでした。私たちの宇宙は急速に縮小し、太陽のエネルギーも失われました。全てが凍り付いてしまい、やがて暗黒に飲み込まれてしまいました。私たちは宇宙船に乗って滅びゆく惑星から遠く離れることにしました。なぜ私たちの文明が滅びたのか、今は少しわかります。宇宙の謎は外にではなく私たちの内にあるのです。『小さな私』と『大きな私』があり、そのことを知るべきでした。けれど、私たちはもうすぐ無限の自由を手にすることができると思い、益々『小さな私』を増やしてしまった。その『小さな私』が暗黒を引き寄せていたのです。小さくなった私たちの宇宙は見る間に暗黒に飲み込まれてしまった。私たちの惑星は、銀河集団の集まりであるスローン・グレートウォールの一端にありました。ここから見ればちょうど対角線上になりその距離は10億光年です。そこから先は暗黒の宇宙です。私たちは長い旅の果てに既に滅び去り、今ここにいるのは『こころ』だけ、光によって運ばれた幻影にすぎません。しかし、大事なのは『こころ』なのです。ロクサーヌ、意識を自分の内部に向けてください。『こころ』は誰にもありますが、私を見ることのできるものは限られています。もしあなたが私を見ることができるのなら、自分の『こころ』をよく見て観察してください。そうすれば、この破滅をもたらす暗黒の正体を見ることもできるでしょう。」そう言い終えるとペーシュウォーダの幻は消え、気づくと私はホテルの部屋の中にいるのだった。
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