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NEXT LIFE  ガネーシャ 2

 壊れたガネーシャが運ばれたのは、紅葉丘のほうだと聞いた。だが、まずは依頼主の畔倉慶太にお詫びし、状況を確認すべきだろうと思い、白糸台へ向かった。

 府中は、随分久しぶりだが、かつてはこの辺りを毎日のように車で走り回っていた。金融会社で働いていた20代の頃は、幾つかのグループに分かれ、どれだけ回収できるかを競っていたものだ。普通の営業会社でいえば、売り上げを競っていたわけであるが、あの時配属された場所では、売り上げではなく、督促し回収する金額を競っていたのだ。

 社会的には非難され、実際に悩むこともあった。だが、一方ではその仕事が面白く、同僚との付き合いも楽しかったし、何より、競争することがまるでゲームでの勝敗を競っているように感じられ、回収金額を増やすことが勝利であり一種の快感だった。

 府中は、中でも狭いエリアに多くの客が密集していて、回収効率の良い場所だったのだ。

 白糸台もその一つだった。思い出されるのは、夏の夜。甲州街道を走り、左手下方に高層マンション群が見えると、真っ暗な中に部屋の窓や通路の明かりが白く光って浮かび上がる様が、まるで蛍の群れのように見え、不思議な美しさを感じたことだ。

 その景色を思い出すと、またすぐある客の記憶へとつながる。その人は、高層マンションの一室に居住しながら、自営で貿易関係の仕事をしていた。部屋の中にも、色々な置物やあるいは織物、トラの毛皮や絨毯など、そして数多くの食器類、陶磁器や銀製品などがあった。

 もちろん初めのうちは、滞納することもなく順調そうに思えた。だが、金取引の詐欺まがいの事件に巻き込まれた頃から様子がおかしくなった。
最後にその人に会った時には、夜逃げの準備をしている最中だった。
既に妻子の姿はなく、部屋中に積まれた段ボールの箱の中に一人でいた。その人は、床に大の字になってひっくり返り、ポツンと呟いた。
「俺はもう駄目だ。」
私は、何も言えなかった。勿論、元気づける言葉はかけたが、夜逃げを止めることはしなかった。死なれるよりは、ましだと思ったのだ。

畔倉慶太の新しい住所は、そのマンションの近くだった。

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