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NEXT LIFE  ガネーシャ 12

 40年も前にここに来て、このガネーシャを修理したというのであれば、それは山名響子のことだろうか。

「これは、その時のガネーシャで間違いないのですか?」

「ええ、間違いありません。割れた傷の位置も同じです。それに、このあたりには、宝石を販売する会社は多くても、破損した石を修理するところはあまりありません。まして、このくらいの大きさになると、私の処以外には知りません。」

「そうですか、その方は名前は分かりますか?」

「山名響子と書いてますね。清原さんの依頼主の方は違いますか?」

「いえ、間違いないですね。今回の依頼主は、その方のお孫さんで畦倉慶太さんになりますけど。」

「そうですか。そうだ、その後に一年位たってからだったかな、その方からハガキが届いたのですよ。何でも子供が生まれて幸せにしていると書いてあったと思います。山名響子さんは今もお元気でしょうか?」

「いや、それが、その方は既にお亡くなりになりました。詳しいことは知りませんが、娘さんがいて、その方がこのガネーシャをもっていらしたようです。その娘さんも、今はどうしているのか良く分かりません。お孫さんが引っ越しをするので、部屋を整理したら、これが出てきたようです。」

「そうでしたか。分かりました。ではこれから修理しますが、固定するまで3時間くらい見てください。」

「分かりました、よろしくお願いします。」

 工房を出ると、ぶらぶらと周辺を散歩した。この辺りには、宝石の卸業者が多い。小売りもしているが、殆どは業者間の取引だ。そのせいか、一見さんや同業者以外はお断りの店が多い。ダイヤでいえばルース(裸石)で売られている物が多く、デパートで見る様なリングではない。だから、この工房のように素人に修理をしてくれる石屋さんも殆どないのである。

 この辺りにある石材工房と言っても、殆どは墓石など大きなものを扱う。ガネーシャの置物などは扱わない。一方で、宝石のリフォームと言えば、リングやチェーンの修理が殆どである。たまに石の研磨やリカットである。割れた石の接着は扱わない。

 この工房とは、引っ越し会社で働きだしてからの付き合いだ。陶器の修理などであれば金継ぎの業者をさがすのだが、今回の様に石の場合は、普通は修理してもらえない。だから、ここは貴重な業者で、ご主人も人徳があるのか、工房教室を兼ねていて、生徒さんでいつも賑わっている。

 そう考えると、山中響子が、ここにガネーシャを持ち込んだのも他に選択肢がなかったからだとも考えられる。東京中探しても結局、ここしかなかったのかも知れない。
40年後に、また持ち込まれたのも単なる偶然だと考えるべきだろう。

 いつの間にか、上野公園まで歩いていた。ベンチに腰掛けて、お茶でも飲もうと思っていたら、携帯が鳴った。また、刑事からだ。

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