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ロクサーヌ (その27)

  ヒトミは、敦煌でウシュパルクに報告していた。「ロクサーヌを長安で見ました。彼女はあの廃墟となったタワーに一人で歩いて行きました。護衛もなく、たった一人であの騒乱の中を行くというのは、どうしてなのでしょう。しかも、誰も彼女を攻撃せず、彼女を遮る者もいませんでした。彼女が通ると、皆道を開けていたのです。」ウシュパルクはしばらく沈黙していた。やがて、何かに気づいたように口を開いた。「恐らくロクサーヌは、自分の意思を持ち始めているのだろう。」ヒトミが愕いて言う「ロクサーヌはただのプログラムされた自動人形にすぎません!それがどうして意思を持つのでしょうか?プログラムされた自動人形は、ただ他の自動人形の真似をするにすぎず、自分では思考せず、自分では感情も持てない、それが本来の姿だったはずです。彼らの発する言葉は、オウム返しに過ぎない、そのようにプログラムされているのですよねえ。」ウシュパルクが答えた。「確かにお前の言うとおりだ。だが、そもそもごく僅かな確率で、自ら思考し新しい言葉を発するようにしてあるのだ。そうでなければ、進化というものが起きないからだ。その進化のプログラムが発動するのは、その者がある知性の水準に達したときか、もしくはプログラムに何者かが侵入し、異常が発生した時だ。ロクサーヌが急に知性の水準を自ら上げたとは考えにくい。何らかの異常が起きているのだ。」そう言われると、ヒトミには長安の混乱ぶりはやはり異常だと思えた。「長安の状態はとてもひどいものでした。敦煌が自由を制限するのも無理はないと思われます。暴力が支配し、人々はコインだけを頼りに動いています。」ウシュパルクは、考えあぐねていた。原因がわからないままでは、実験を中止することもできない。もし今の状態で中止すれば、何の成果も得られないからだ。だからといって、このままにすることも危険に思えた。ロクサーヌが意思を持つということは、他の自動人形たちも意思を持つ可能性があり、そうなるとこの仮想の地球全体がコントロール不可能な状態になってしまうからだ。
 思考するうちに一つの可能性がウシュパルクの脳裏に浮かんだ。「ロクサーヌはペーシュウォーダを見たのかも知れない。」「ペーシュウォーダとは何ですか?」「私たちより『先に創られたもの』のことだ。彼らの文明は古く、私たちとは違う道を歩んでいた。私たちは彼らよりのちに生まれたのだが、伝説では彼らは星々を支配するほどの文明だったと云う。しかし、暗黒が彼らの文明を滅ぼし、彼らは滅び去ったのちも光となり宇宙を彷徨っていると云う。」「それがどうして、ロクサーヌと会うのでしょうか?」「会ったのではない。あれはヴィジョンなのだから。ヴィジョンを見ることのできる者だけが、あれを見ることができるのだ。ロクサーヌを作ったのはkだ。つまり、kがヴィジョンを見ることができる者なのだろう。」ヒトミはkの暗かった子供の頃を思い出した。
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