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NEXT LIFE  変革の時 8

 ホテルに戻って、風呂にでも入ろうと、大浴場に行った。露天風呂に浸かって、下界を眺めると、眼下に若狭湾が見える。静かで、綺麗な碧い海。だが、太平洋に比べて日本海は暗いなどとという人もいる。どうして、そういうイメージなのか、やはり冬のイメージが強いのか。俺には分からないが、こうしてみると、夕日に染まり葡萄色の海のようにも思える。

 この海を渡った先には、かつてシベリア航路と呼ばれ、ロシアまで続く鉄道があった。敦賀港は大陸への入り口でもあった。更に古くは、大陸からの帰化人も多くここに到来した。、新羅から、高句麗から、渤海から。

 第2次大戦後には、シベリアからの帰還者もここに来た。そして、朝鮮へ帰る人々もここを通った。漁船で来る人も多い、その中には当然スパイもいる。北の共和国へ日本人を拉致する者もいた。

 ここに、この場所に日本で最初の原子力発電所ができた、というのは歴史を見ると、偶然ではなく、大陸との関りがある、という事なのか。大陸からの攻撃を考えれば、ここは余りに無防備ではないか。近すぎるし、交流がありすぎる。大事な技術や軍事機密を「どうぞ、持って行ってください」と、言っているようなものだ。

 東亜連盟、という組織が戦前にあった。日中朝の東亜三国を中心に連盟を築いて西洋に対抗しようとする運動で、軍部、特に満州関係者には影響力があった。戦後になっても、満州からの繋がりは続いていたが、そのアジア主義者は、今も密かに活動しているのだろうか。左翼や右翼を越えて、アジアは一つと言いう理想を持っているのだろうか。

 風呂に入って、ぼんやりと、そんなことを考えていたら、湯煙の向こうに老人の姿があった。
いい眺めですね、と老人が言うので、そうですね、と答えた。老人は、シベリアから帰って来たと言う。
あの、海の向こうに故郷があるのですよ。いつか、帰りたいと思っているのですが、とうとう帰れないままです。

 ソ連兵に襲われた、という話は、ドラマなどでも見ますが、実際は、朝鮮人・朝鮮保安隊による強姦がひどかったのです。ドイツでは、200万の女性がレイプされたと言いますが、朝鮮での日本人の状況もそれと同じでした。ある九州の病院の記録によると、強姦により妊娠した引揚者のうち、半数以上が朝鮮人によるものだったそうです。私は、その人達を守れずに、シベリアへ連行されました。

 ところが、日本に帰ってからも、私は『シベリア帰り』という事で、白い目で見られたのですよ。
守るべき国とは一体何だったのでしょうね。

 ある詩人が、『身捨つるほどの祖国はありや』などと、唄っていましたが、私も苦しみました。祖国はあったのですよ、確かに。それを守る為に大勢の人が、戦い死んだのですよ。でもね、戦争が終わって帰ってみれば、ああ、確かに敗けたのだな、と分かりました。

 私の祖国は、敗戦とともに確かに滅んだのですよ。今あるのは、別の国です.私の国は海の向こうに行ってしまいました。浦島太郎ですよ。戻ってみれば、もう知った顔もなく、見知らぬ国になっていたのです。
今の私は、この国で異邦人となってしまいました。あなたはどうですか?

 俺には、良く分からなかった。確かに異邦人ではあるが、それは、俺が異邦人なのか、それともこの国が別の世界の国だからなのか。実際、ある日気が付いたのだ、別の世界にいるのだと。それは、前の世界にそっくりだが、何かが違っている。俺は、ここでは異邦人なのだと。

で、異邦人の俺は、この国で何をしようとしているのか? 生きる理想のありやなしや?

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