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ロクサーヌ (その34)

   敦煌のタワーの中で、ウシュパルクは新しい報告を受けていた。ヒトミの報告では黄海と東シナ海、日本海の3つの海の境界付近で時空の亀裂が観測されたという。その報告を受けると、ウシュパルクは驚き、報告の詳細を確認した。そして、事態が想像を超えていたことにショックを受けた。「私たちの実験の目的は、人類の歴史を再現することで滅亡を避ける方法を探ることだった。しかし、今起きていることはただ単に人間の問題ではなく、私たちを含めた宇宙の存在に関わることなのかも知れない。」ウシュパルクの説明にヒトミはすぐには理解できなかった。「どういうことなのでしょうか?よく理解できないのですが。」
 「つまり、これは異常な事態なのではなく、これが正常な姿だということだ。私自身、もちろん正確に理解しているわけではない。しかし、歴史は一つではなく、世界も一つではない。時間というものも、そもそも私たちが作り上げた概念に過ぎない。例えば、今私がこの時間にこの場所に存在しているのだが、同時に別のもう一人の私が別の時間に別の場所に存在している。あるいは、もっと無限の数の私が、過去にも未来にも、現在にも同時にあらゆる場所に存在している。この世界は一瞬ごとに無限の可能性に向けて開放されていて、そのすべての可能性が現実として存在しているのだ。光は波であり、粒子でもある。私たちを構成しているすべての電子も原子も同様に波であり粒子である。万華鏡のようなものなのだ。そして、無限の波からできた私たちが、存在し生活して来たものの全ての集合が歴史だ。それゆえ、全ての歴史は波であり、粒子であり、ここに存在しまたあそこに存在する。ほんの少しずつ異なった歴史が無限に存在する。それが、ある瞬間に出会い交差する。その可能性もまた存在するということなのだ。」
 ヒトミには、やはり理解しがたかった。ウシュパルクは続けて言う。「私は、一瞬の時間を認識できないし、また永遠を認識することもできない。だから、今起きていることの全体を認識できず、説明することもできない。そのことは済まないと思っている。だが、きっと私たち以外のこの仮想の地球を作ったチームは正確に宇宙を再現したのだろう。この仮想の地球で起きている、歴史の混乱はそのような複数の歴史が出会った結果なのだろう。今の私にはこのような説明しかできない。」
ヒトミはウシュパルクに尋ねた。「この実験の未来はどうなるのでしょうか?」「私が今思っていることは、ロクサーヌの存在がやはり全ての出発点なのだろうと思う。別の世界、別の宇宙と交差する何かがあるのだろう。私もまた、一研究者としてもっと知りたいとは思う。しかし、同時にこれ以上危険だと判断した時には、責任者として実験は中止してすべてを破壊しなければならない、とも思っている。」
ヒトミは、実験もそうだが、むしろ幼馴染のkのことが心配だった。
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