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ロクサーヌ (その35)

 私ロクサーヌは、鐘崎に上陸すると、初めに小さな神社にお参りした。そこでは2匹の狛犬が出迎えてくれた。神社の神主に、ここはどこなのかと尋ねた。「この神社は日本の九州という島の北のはずれにあります。その昔、まだ地球が熱かった頃、日本は海の中にあり、まだ形がありませんでした。しかし、沸騰する海の中からいくつもの泡が生まれそれが日本の島々となりました。その一つがこの九州です。ここが島となった時に大海の流れの中に小さな流れが生まれました。それがこの海で玄界灘といいます。この小さな海の流れは、私たちを大陸から分けてくれています。この海を渡るのは、大変危険でしたが、私たちの祖先は世界が冷たくなり大陸が凍り付いてしまったときに、海を渡ってきたと聞いています。それからいくつもの時代が過ぎ、大陸で戦乱が続いた為、大勢の人々が危険を冒して海を渡ってきました。私たちの祖先は、争い事や、海上での嵐から無事でいられるように小さな島を神に捧げたと聞いています。それがあの沖にある神の島なのです。この神社はその入り口なのです。」
 私たちは、神主と別れ宿を探して歩いた。海辺に一軒の家があり、そこの老夫婦に尋ねた。「ここには宿屋などはありませんが、うちで良ければ泊っていきなさい」ありがたい言葉に私たちは感謝して泊めてもらうことにした。その家は、古い作りで玄関を入ると土間が左手にありその奥が台所になっている。土間を挟んで右手が客間兼居間のようになっており、その手前に板張りの空間がある。左手には梯子のような黒い階段があり2階へと続いている。私たちは2階に泊めてもらうことになった。老人の祖先は2000年前の漢の時代に、戦乱を逃れてここへ来たそうだ。老人は裕福な庄屋の跡取りだったのだが、生まれつき耳が聞こえず家督を弟に譲り、独立して今は表具師として生計を立てているそうだ。
 そこへ、近所の若者がやってきた、福岡の大学で学んでいたのだが今度大阪へ旅立つのだという。若者は希望に目を輝かせて、新しい時代が来たことを私たちに自慢していた。「資本主義というのをご存じですか?西洋では100年も前からその新しい時代の考えを実践しているのです。それは、今までのコインの世界や封建主義とは違います。人々の夢を形にするシステムなのです。今までは土地やコメなどの実物を担保に、金貨や銀貨などのコインを使っていました。しかしこれからは、人の想像力、アイデアを信用してマネーが投資されるのです。これが信用創造という仕組みで、西洋では銀行や株式市場がそのマネーを投資してくれるのです。身分や財産がなくても、想像力一つで世の中を変えられる、豊かになることができるのです。私はこれから大阪へ行き一旗揚げるつもりです。大阪ではすでに銀行や株式市場があり、そこに参加すれば投資を得られるそうです。もちろん一朝一夕で済まないことは承知しています。しかし、その夢にかけてみたいのです。」そう言って、若者は旅立っていった。
 私たちは、すでに敦煌でそのマネーが終わった世界、想像力すら管理される世界を見てきた。どのような経過でそんなことになったのかはわからないが、若者の希望が叶うことを願った。日本はこの時、明治維新を終えたばかりだった。

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