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月の光 11

 城外開拓区警察署で、中西が飛鳥研究所での聞き込みの結果を斎藤に報告していた。

 「吾妻夫妻ですけど、飛鳥研究所では現在メソポタミアの方に夫婦で長期出張中とのことでしたよ。日本にいつ帰ってくるのか、予定もはっきりしていないようです。」

 「ということは、所有者が不在というのは本当の事なんだな。息子を残したまま、夫婦で海外出張か。随分いい気なもんだな。旦那の方はまだ分かるとしても、女房の方は、子供が心配じゃないのかぁ?しかも障害を持った子供だぞ。エリート学者の考えることは、俺には全くわからない。で、息子の方はどうなんだ、何かわかったか?」

 「それについては、柳田に調べてもらっています。福祉センターの記録を照会するように言いました。今、呼んできます。」

 中西が、出ていくと、斎藤は飛鳥研究所についての資料をもう一度確認した。『障害を持った子供を日本において、夫婦で海外出張させる、そんなことが本当にあるのか。もしそうだとすれば、この研究所自体が怪しい、ということになる。

 何だか、わからないが、俺の経験からすると、ここには何か表に出せない秘密があるに違いない。』そんな、疑念が益々強まるばかりだった。

 暫くして、中西が柳田里美を伴って、戻ってきた。

 「吾妻清人ですが、彼は現在はどの施設にも通っていません。つまり、どこにも所属していないんです。」

 「じゃあ、いい年をして働きもせず、かといって勉強もしない、福祉の施設にもいかない、ということか。一体何やっているんだ。いくら何でも、暇を持て余して退屈するだろう。ずっと家に閉じこもっているのか?」

 「ですので、それが障害なんだと思います。社会性を持てないのじゃあないでしょうか。多分どこにも、所属不可能な精神的な障害なんだろうと思いますけど。」柳田里美が、斎藤の言葉に反発するように、目をまっすぐに見返して言った。

 「しかし、それは君の憶測だろう。何か、根拠でもあるのか。」斎藤も挑発されたのか、怒気を含んだ言葉で言い返した。
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No title

gassetさん、こんにちは。
いつもブログご訪問ありがとうございます。

段々佳境に入って来ましたねぇ。
ますますのめり込んで読みたくなってきました。
それにしてもやっぱりgassetさんは凄いですよ。
私も高校時代に創作を書いていた頃がありましたが
段々書いているうちに何を書いているのか
何が書きたかったのか、分からなくなって
途中で断念した作品が数知れず(笑)
ですから、こうやってしっかりと背景や描写を正確に書ける方の
才能が羨ましいです。
これからも期待しております。

Re: No title

いつも読んで頂きありがとうございます。

お褒め頂き大変恐縮です。

去年、初めて書いた小説が「ロクサーヌ」です。歴史や、宇宙の話、仏教の話が好きです。
なので、いわゆる小説は、あまり読まないし、文学的な修飾や表現も苦手です。

若い頃は少し解離性障害のようで、変わった夢をよく見ました。
ですから、書いているものは、自分で見た夢の情景を自分なりに解釈し脚色しているものが多いのです。
多分、小説というよりも、何というか、瞑想、自分との対話、そんな個人的な精神の妄想探求を目指しているので、
文学としては期待外れになるかと思います。(スミマセンが)

でも読んで頂き、本当にありがとうございます。宜しくお願いします。
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歴史的事実に改編を加えた妄想小説です。

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