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月の光 17

 翌日は、昨夜の戦いが嘘のように、輝く朝日が湿原と列車ハウスを照らしだし、ただ湿原に葦の穂先が風に揺らぐだけの静かな朝だった。戦いの後は何も残っていなかった。

 マザーは、建築業者を呼んで、列車ハウスの周囲10m四方に柵を張り巡らし、弱い電流を通わせ危険表示板を取り付けた。その工事が終わった午後、今度は、昨夜の騒ぎを何処からか嗅ぎ付けたマスコミの一隊がやってきた。

 彼らは、新しく出来た柵の一角にある門に取り付けられたインターフォン越しに、大声で呼びかけてくる。だが、マザーは一切応答をせず、ひたすら無視を決め込んでいた。彼らは、それでも執拗にチャイムを鳴らし続けた。

 業を煮やした一部の者が、力づくで柵を乗り越えようとして、手をかけた瞬間、何かに弾かれた様に、飛び退いた。電流に当たったのだろう。彼らは、危険表示板に気づき思い通りの取材ができないことを悟ると、引き上げた。

 マザーは、この新たな敵の襲来を予想していたのだろうか。今や、この柵で囲まれた領域が僕たちの守るべき、領土なのだ。そして、敵はこの大勢で、無遠慮に押しかけてくるマスコミなのだ。勿論、ホタルたちとの戦いも終わったわけではないのだが。

 ホタルたちと違って、僕にはこのマスコミの人々が何を求めてきているのかが理解できない、不気味なのだ。彼らが人間だからだろうか。始めは味方のような振りをして、状況次第ですぐに敵に変わる。それが僕の知っている人間だ。

 城外開拓区の警察署でも、マスコミや住民からの問い合わせが増えていた。

  『昨夜、城外開拓区の入植地の一部で、数多くの動物と思われる生き物の悲鳴が聞こえた、と地域の住民からの通報が寄せられました。

 私たちは、現地へと取材に向かいましたが、そこには列車のような箱形の物体があるだけで、その住人からは一切返事がありませんでした。周囲には電柵が張り巡らされ、私達が呼びかけると、その柵に電流が流され、数人の仲間が負傷しました。

 辺りは、古代から続く湿原で、鳥や虫やカエルなどの小動物の楽園となっていましたが、今やこの列車ハウスの為に、動物たちにとっても、危険な地域となってしまいました。このようなことが、開拓地で許されるのでしょうか。一部の入植者による、危険な開拓の実態が明らかになってきました。

 この列車ハウスの住人は、今も私たちの問いかけにい答えようとはしません。現地から大沢美穂がお伝えしました。』

 長い髪をそよ風になびかせて、目鼻立ちの整った美人レポーターが語るニュースをモニターで見ながら、中西がぼやいた。

 「けれど、誰も被害者がいないのだから、俺達にはどうしようもないですよね。」

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