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月の光 18

 状況が変わったのは、マスコミの報道に感化された、環境保護団体や、動物保護団体などの人々の組織したデモ隊が、一団の群衆となって湿原に現れてからだ。

 群衆と言っても、せいぜい百人程だが、それでもこの城外開拓区でこの様に大勢の人間の集団を見るのは初めてだった。

 彼らは、葦原の周囲を探るだけでなく、葦原の湿原の中にも足を踏み入れ、モナの作った戦士たちの墓地をそうと気づかずに、踏み荒らしていった。

 そして、最初にモナを発見した場所、ホタルたちの攻撃を受けて無残に掘り返された辺りにも現れた。彼らは何を思ったのか、そこで気勢を上げシュピレヒコールを叫んだ。

 誰に向かっているのか、多分、環境を破壊する入植者は出ていけ、と僕には聞こえた。僕の住む列車ハウスに向かって叫んでいるのだろう。

 その様なデモの群衆が、数日の間、この湿原にやってきた。そして彼らが隊列を組み、柵の門の前にまで来たある日のこと。突然、蜂の集団のような黒いものが群衆を襲った。

 人々は、その蜂のようなものの攻撃を受けると「ギャー、痛い、痛い、助けてー」などと、口々に大げさな叫び声を上げ、慌てふためいて逃げ帰った。

 報道によると、デモ隊の人々は、頭部に鋭い何かで刺されたような、或は引掻かれたような裂傷を負ったらしい。僕には、関係のないことなのだが、いつの間にか、列車ハウスがその原因であるかのように噂されていた。

 「住民からの苦情が増えていますねえ。でも、これは、自分らには対処の仕様がないでしょう?」中西が、さもお手上げだと言わんばかりに、斎藤の顔を見る。

 「そうなんだがな、警察が何も動かないと言って、本部にも苦情が来ているらしい。」斎藤も、うんざりした様子で、答えた。

 丁度その時、内線のランプが点滅した。「斎藤さん、大和署長がお呼びです。」

 『参ったな』斎藤は、内心では列車ハウスの件だとは思っていたが、敢えて知らないふりをしようと決めた。

 署長室に入ると、斎藤はいつもよりも丁重に、かしこまって尋ねた。「斎藤です。失礼いたします。署長お呼びでしょうか。」
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