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月の光 19

 署長の大和は、少し前に首都警察本部科学捜査班の橋本から、列車ハウスの状況について確認を受けていた。

 「どうやら、本部でも列車ハウスの件が問題になっているようなのだ。君の方からの報告では、列車ハウスには少年が一人で居住していて、直接の連絡は取れなかった、となっているね。確か両親はメソポタミアに出張中と聞いたが、その後の状況はどうなんだ?」

 「今のところ、ご報告できるような進展はありません。」

 「そうか、実は、科学捜査班の方から連絡があって、今回の蜂の騒ぎなのだが、その際に蜂の集団が雲の中から出現したというのだよ。」

 「蜂が雲の中から出てくるというのは、初耳ですね。そんなことがあるのですか?」

 「そんな馬鹿なことはない。つまり、これは蜂のような虫ではないということだ。少なくとも、地球上の虫で、雲の中から出てくるものはいない。」

 斎藤は、署長の話の意図が分からず、キョトンとしてしまった。

 「それは、どういうことなのですか、地球上の虫ではないとすれば、一体なんだというのでしょうか。」

 「うむ、科学捜査班の方では、雲の存在も含めて、今回の件が地球外生命体の可能性があるとみているのだよ。初めに、ホタルの大量発生があっただろう。あのホタルも、今回の蜂同様に雲の中から出現したといわれている。」

 「では、あのホタルも地球外生命体だというのですか?」

 「そうだ、科学捜査班の方ではそう疑っている。と言うのも、この件は既に国立航空宇宙研究センターが調べているのだ。だが、まだ一般には秘密にされている。まずは、列車ハウスの住人とのコンタクトを取るように、との指示なのだよ。」

 「ですが、そんなことが本当にあるのでしょうか。俄かには信じ難い話に思えます。」

 斎藤は、署長に対して失礼だとは思ったが、あまりの話に思わず、疑念を漏らさずにはいられなかった。

 それでも、大和署長は冷静だった。ノンキャリアで署長まで上り詰めた彼は、どんな状況でも本音を漏らさず冷静に対処し、決して上司の命令には逆らわない、というのが信条だった。それは、斎藤のような感情をあらわにする部下に対しても同様だった。

 「今回の事件は、我々の判断できる範囲を超えているのだよ。問題は、これ以上一般人をあの場所に近づけず、穏便に事態を収拾することだ。その為に、あの地域一帯を封鎖する。そして、できる限り早急に、列車ハウスを撤去するのだ。それしか方法はない。」大和署長は、表情も変えずに、列車ハウスの撤去を告げた。

 「撤去ですか・・・。承知しました、やってみます。」とは言ったものの、斎藤には別の心配も生じていた。

 斎藤は、列車ハウスの事を頭に浮かべた。もしかすると、既にあの中に地球外生命体が侵入していて、吾妻清人が危険にさらされているのかも知れない、そう思ったのだ。
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こんばんは。

gassetさん、いつもブログご訪問ありがとうございます。
いよいよ物語が白熱してきましたねぇ。
登場人物のやり取りが本当のドラマを見ているように
迫力があって、思わず引き込まれてしまいます。
今後の展開を楽しみにしています。

Re: こんばんは。

いつもお読み頂きありがとうございます。

ちゃんとした小説を読んでいないので、テレビドラマのイメージしかありませんが、そのように仰って頂き有難うございます。

なんとか書き続けたいと思っています。

また宜しくお願いします。
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歴史的事実に改編を加えた妄想小説です。

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