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ロクサーヌ (その37)

私kは、研究所を辞めることを教授に話した。教授は特に引き留めることもなく了承してくれた。大して重要な仕事をしていたわけでもなく、取り換えの利く人員に過ぎなかったからだろう。3年間通った研究室の窓から西日が差している。改めてみると、ここから見る夕焼け空も何か懐かしく感じられる。今日で終わりなのだと思うと、少し寂しくもあるが、それでも私には自分が何者なのか確かめる必要があった。
 私には、解離性障害に似たところがある。離人症や明晰夢などもそうだ。それらは、極度の不安やストレスからくる場合もあり、また先天性の病気の場合もあるそうだ。私は病気というほどの症状でもない、だが他の人から見ればくだらないと思われるだろうが別の心配がある。
 学生の頃よく麻雀をしていたのだが、時々、牌を並べる前に次に自分がどんな手役であがるのか、わかってしまう。どんな手役のどんな待ち牌を、誰が振り込むのかハッキリと見えてしまうことがあった。そのため気味悪く思われることもあった。それでも、麻雀などは所詮遊びなので、熱中するあまりにそういうこともあるのだろうと思っていた。
 また、伊豆の石廊崎でゼミの合宿の集合写真を撮ったことがあった。みんなの分をプリントして配ったのだから同じ写真のはずだった。ところが、暫くして私が持っている写真には知らない人の横顔が映っていたことに気が付いた。その人はコートの襟を立て強い風のため髪が乱れ顔が隠れていた。見えていたのは髪とコートの襟だけだった。誰なのだろうと思い、他のゼミ仲間に聞いたのだが、誰も知らなかった。その人が映っていたのは私の写真だけだったのだ。その時も何かプリントの不具合なのだろうと思い、気にするのはやめていた。
 しかし、3日前に起きたことは私には少し重い出来事だった。その日、私は帰宅するために新青梅街道を車で走っていた。そして田無の駅を過ぎた頃前方左手に白い車が止まっているのが見えた。すると私の左側の車線を1台のバイクが後ろから走ってくる。私はそのまま右側の車線を走っていたのだが、そのバイクも速度を落とすことなく私を抜き去り、次の瞬間停車中の白い車に衝突した。バイクを運転していた男は空中をきれいに1回転して落ちた。驚いた私は、少し先で車を左に寄せ、走って現場に戻った。だが、そこには白い車が1台停車しているだけで、バイクも運転していた男の姿もなかった。他に通る車もなく、何とも言えず奇妙な気分を抱えたまま私は車に戻った。夜の9時過ぎだった。翌日、新聞を見ると新青梅街道でのバイクの衝突事故が載っていた。場所は田無駅の付近で、時間は夜の11時、運転手は即死だったそうだ。以前は、夢の中のことだったり、妄想だろうと思えたのだが、今回は私にはハッキリした現実だった。私は自分に起こるこの不可思議な現象に、何らかの決着を付けたかったのだ。
 私は、今までの環境を変えるため家から離れて、遠くへ引っ越そうと思った。
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