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月の光 29

 吾妻は、早乙女千春の訴えに対して、情熱をもって反論した。

 「いや、ここでこの研究を中止することは出来ないよ。今起きていることは、確かに予想をはるかに超えることだ。それは認める。しかし、これは乾が言った通り、この文明を作った人々のメッセージかも知れないのだ。

 この、列車ハウスは確かに箱舟なのだよ。よく見てごらん、ここでは外部の助けなしに、生活することが可能なのだ。この植物たちは、まるで現代の僕らの生活を知っているかのようだ。食堂に備えられた道具や、食料もある。バスルーム、も、ベッドルーム、シャワーも皆そうだ。

 これは、僕らにとってのシェルターとして機能しているのだよ。それが何故なのか、それを見極める必要がある。確かに、気味の悪い事態ではあるけれど、少なくとも僕らにとっては快適な環境が創られたのだと思う。」
 
 吾妻は、この事態をむしろ歓迎していた。メソポタミア文明に先行する、全く新しい異質な文明を発見したような気になったのだ。飛鳥研究所には報告した。

 飛鳥研究所でも事態が容易ならざる事だと認識はしたが、やはり研究の続行を望んだ。成功すれば、画期的な研究になる可能性があり、メソポタミア文明以来の地球文明史を大きく書き換えることができる、と前のめりになったのだ。

 千春は、吾妻の真剣な説得に加え、飛鳥研究所からも残って研究を手伝うように依頼された。それを拒否するほどの強い意志も持てずに従った。

 だが、秘密を共有することで、不安が消えたわけではなかった。むしろ、尊敬する乾に対しても、後ろめたい感情を持ってしまったのだ。

 精神に不安を抱えた千春に、夜ごと夢の中で話しかけるものがあった。それは毎夜、同じ夢で、列車ハウスの植物達が笑って話しかけてくるように思えたのだ。

 「吾妻さん、実は、私、毎晩同じ夢を見るのです。」

 「どんな夢?」

 「この箱舟の植物たちが、何かを話しかけてくる夢なんです。なんだかとても怖い気がするのです。」

 「あぁ、実は僕も同じような夢を見ている。この花がにこりと微笑みかけてくるのだけど、でも、僕にはそれが花たちが僕らを祝福しているように思えるのだよ。」

 千春は、2人が同じ夢を見ていることも、不思議だったが、それを全く違った風に解釈する吾妻に驚いた。

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