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月の光 31

 千春には、吾妻の気持ちは突然すぎるような気がした。確かに、ここにきてもう1年になる。乾がいなくなってからも、半年を過ぎ、2人で過ごした時間が長くなり、親密さも増したのかもしれない。

 だけど、愛情というには早い。そんな風には千春は思っていなかったし、吾妻も恋愛感情を口にすることはなかった。それが、どうしてなのか、急に愛情を告白されて、動揺した。
 
 「吾妻さんのお気持ちは、嬉しいのですが、でもまだ私は、恋愛感情にはなれないのです。

 それに、植物たちが何か、自分の意志を持って、生きているように思え、花たちが本当は何を伝えたいのかも分からないので、それが不安なのです。」

 「君は、まだそうなのかも知れないね。でもね、僕はいずれ君が、僕を愛してくれると思っているよ、それが僕たちの運命なのだよ。僕には、もうそれが定められた事のように見えるのだよ。」

 吾妻は、まるで何かを見てきたかのように、強い確信をもって断言した。

 その日から、日ごと、夜ごとに愛の言葉をかけられ、初めのうちは言葉だけだったのが、そのうちに髪をなでられ、肩を抱かれるようになり、身体の触れ合いとともに千春の心も揺れ動き、いつの間にか、吾妻を男性として意識するようになり、やがて愛情も芽生えてきた。

 吾妻と結婚した千春だが、それでも、一抹の不安があった。それは、夢に出てくる花たちだ。夢の中で、花で作られたベッドの中にいるのだが、ある時、ひときわ大きな花が、まるで生きている人のように、現れ、千春を抱きしめる。その夢は、余りに艶めかしく、吾妻に伝えることはできなかった。
 
 それから、暫くして清人が誕生した。それは、吾妻の子であるはずだが、千春には何故だか喜ぶ気になれなかった。吾妻の話では、自分たちが、この植物たちの主人だというのだが、千春から見ると、むしろ植物たちの為に、2人が結婚したように思えて仕方がない。

 清人は、花の子供のような気がしているのだ。だが、それを吾妻に話すことはできず、一人で心に不安を抱えたままだった。

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No title

いつもブログご訪問ありがとうございます。

段々凄い展開になって来ましたね。
これから先が楽しみです。
頑張って下さいね。

Re: No title

いつもお読みいただきありがとうございます。

もっと先を書きたいのですが、そうすると粗筋ばかりになってしまうので、
かと言って、説明を省くのはどうなのか、と悩んでしまいます。

やっぱりこの辺はちゃんとした小説を読まないと難しいですね。

また宜しくお願いします。
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歴史的事実に改編を加えた妄想小説です。

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